No.28
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※現在プレイを休止しているものあります。
倉庫としておいています。
受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。
倉庫としておいています。
受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。
「真さん、今から思ったことは全部口に出して」
唐突な命令、いえお願いだった。京極真は、ゆっくりと瞬いて、その言葉の意味を咀嚼しようと試みた。
「……つまり、どういうことですか?」
「お腹が空いたなーと思ったら、お腹空いたなーって言ったり、喉が渇いたなーと思ったら喉が渇いたなーって言うの」
「なるほど」
「私が好きだなーと思ったら好きだなーって言うのよ」
「えっ」
「なぁに?不満なの?」
上目遣いで睨まれて、京極真は咄嗟に浮かんだ言葉を打ち消した。
じっと彼女が見つめている。
彼女のお願いであれば出来ることなら叶えるつもりだ。
出来ないことでも叶えられるように精進するつもりだ。
つもりではいけない。
そうする、と決めている。
決めているのだが、京極真は困った顔をした。
「もう、真さん、困ってるなら困ったなーって言うのよ」
「ええと、これはどういう意図での行為なのですか」
「だって普段から真さんが何考えてるのか、気になるじゃない」
京極真は思考を無にした。
思わなければ、何も言わなければ、嘘ではなくなる。
すっと息を吸った。
無我の境地へ至ろうとする京極真を、彼女がゆさゆさと揺らす。
「ちょっとちょっと!いきなり修行モードに入ってない!?」
「そ、そんなことは」
「嘘。絶対そう。どうせ、何も考えないようにすれば何も言わなくていいと思ったんでしょ」
「…………はい」
ふり絞るように京極真は頷いた。
不実もいけない。
いつでも誠実であらねば。
でも、どうしたらいいのだろう?
彼女のお願いはいつも愛らしくて、どんなことでも聞いてしまいたくなる。
自分にもっと力や才能があれば、どんなことでも出来るのに、いまだこぶし一つ境地に至らず、修行の身だ。
彼女のころころと表情の変わる瞳が、彼をじっと見つめている。
彼は掌を握りしめた。
あの、憎らしい気障な怪盗ならば彼女の喜ぶ言葉ひとつ、軽快に容易に紡げるのだろう。
甘いささやきで彼女の耳を満たすことが出来るのかもしれない。
たった一言で彼女に喜びや笑みをもたらすことが出来るだろう。
そう考えると深く囚われるようで、彼は背筋を伸ばした。
肉体は心で、心は肉体だ。
彼女はどこか心配そうに彼を見つめている。
「真さん、そんなに思い悩まなくても、」
「園子さん」
「……なに?」
彼は、勇気を振り絞った。
「いつも、園子さんのこと、可愛いと思っています。すみません、だから思っていることは何でも言えません」
「…………どうして?」
彼は気づかなかったが、彼女の声には甘い媚が含まれていた。
彼はこれでもかと拳を握り、拷問の末に吐き出す言葉のように打ちひしがれて告げた。
「自分は、あなたのことになると、自制が利かないからです」
固く握った拳に柔らかい手が添えられた。
「そうなの?」
「そうなんです」
「そうなんだ、へぇー」
「軽蔑されるかと、思います」
「へえー」
「申し訳ない」
「ふーん、そうなんだー」
彼は罪悪感で顔を上げられなかった。
視線を上げて彼女の顔を見られなかった。
その時の彼女の微笑みを見られなかった。
「それじゃ許してあげる」
「あ……」
彼はそこでやっと顔を上げる。
「面目なく……」
「いいのいいの!ただの思い付きだったし!」
「有難うございます」
「そうだ、さっきおしゃれなカフェ見つけたんだ。一緒に行こ?」
「はい、園子さんの行きたいところであればどこでも」
きゅ、と彼女が手を握った。
彼はどっと手汗が滲むのが分かった。汚い、とわかっていて、離す事も拒否もできなかった。
彼女は微笑んでいる。さっきと同じ笑い方で。彼は、動揺してやはり気づかない。
自分の頭に浮かぶ考えを言葉にするとやはりどうなるのか、そのことばかり考えていた。