No.73
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倉庫としておいています。
受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。
倉庫としておいています。
受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。
ケーキを食べ終わったあと、二人でのんびりとソファで過ごす。
「レイ先生のお腹の中には何が詰まっているの」
わざとからかうように言いながら、レイのお腹を服の上から撫でる。
「…………お前と同じものだ」
「そうかな?隠れてまたなにか食べてるんじゃない?」
「一緒にいて、どうやって盗み食いするんだ」
「レイ先生は器用だからね」
「盗みは専門外だ」
「分かってるよ、そんな顔しないで」
レイのお腹はきれいに割れている。甘いものばかりでどうやってこの体型を維持しているのか、不思議だ。
「やっぱりスイッチがあるのかな……?」
探るように撫でると、さすがに手を止められた。
「まだ諦めていなかったのか?」
「一緒に暮らしたとしてもあなたへの謎は解明しない気がする」
「……それは、一緒に暮らしてみれば解るのではないか」
視線がはちあったが、レイから逸らした。前々からそんな雰囲気はあって、でもどちらとも言い出したりはしなかった。お互いの生活があり、おそらく一緒に暮らしても顔を会わせる頻度は今とそう変わらない気がしていた。レイの手を握って指を絡めるとしっかりとした強さでレイが握り返した。私の手の甲に唇を寄せて、肌の質感を楽しむように唇を滑らせた。まるで、甘えているみたいだ。
「抱きしめてあげる」
尊大に言ってみせる。レイは小さく笑った。
「なら、頼む」
「いいの?普段なら断るでしょう」
「別に普段も嫌ではない。ただ、お前のタイミングが悪いだけだ」
「そうかな?あなたはいつも、そんな瞳をしているよ」
レイは私をまじまじと見た。
「…………そんな風に見えているのか?」
「――ううん。私の希望混じり。そうだったらいいなと思うけど、そうでもないのは分かってるから」
レイは笑っただけだった。
「……抱きしめてくれるんじゃなかったのか?」
「――ついでに好きって言ってあげる」
レイは片方の眉だけ器用にあげてみせた。思わず笑いながら私はレイを抱きしめた。
「好きだよ」
ゆっくりと息を吐いたレイは、満更でもなさそうだった。私を抱きしめ返して、私もだ、と言った。レイからはミントの匂いが微かにして、それがどこから香るのか、知りたくて首筋に鼻をくっつけた。
「レイ、もしかして飴を食べてる?」
「ああ」
「盗み食いはしないんじゃなかったの?」
「これは盗み食いなのか?」
「いつの間に」
レイはポケットを探り、ミントの飴を取り出した。私は口を開けるとレイは口の中に飴を入れてくれる。
「目が覚めてきた」
「眠かったのか?」
「そうかも」
自分から離れようとは思わなかったけれど、レイも離れようとはしなかった。体温が身近すぎて、口の中だけがひんやりしていく。不思議なかんじだった。キスしたらどうなるんだろうと思って、レイにキスをした。軽く触れ合うつもりだったけど、レイがぐっと体重をかけてきて、そのままどんどん深いキスになっていく。違う!そんなつもりじゃない!
「ちょっと、待って」
「……何故?」
問う理由は、レイの瞳にちゃんと書いてある。
「――飴を食べてるから」
口ごもりながら言うと、レイは眉を下げた。なんだかそれが可愛い。また自分からキスをする、レイが乗ってこようとすると胸元を手で押した。困惑がレイの瞳に過る。
「だめ」
「…………」
レイは私の耳たぶに触れる。
「私はもう飴を食べ終っている」
「じゃあ見せて」
唇を撫でて促す。
レイは渋い顔をして、口を開けた。
ミントの匂いがする。
飴は残っていなかった。
「ほんとだね。でも、私はまだだから」
レイは押し黙ったが、瞳は雄弁だった。私はなんだか楽しくなってしまった。笑ってしまうとレイはぐっと眉間にシワを寄せる。
「からかっているのか?」
「今日のあなたはかわいいね」
「そんなことはない」
「そうかな?私のことが好きだって顔をしている」
「…………それだけか?私の顔に書いてあることは」
「え」
「もっとよく確かめてみるといい」
レイが私の手を自分の頬に添えさせた。
「…………どうかな?マカロンも好きだって書いてあるね」
「それで?」
「あとは歯医者が嫌いって書いてある」
「それは間違いだ」
「虫歯になるのはもっと嫌だって書いてある」
「……………他には?」
焦れたようにレイは言う。
私は薄くなった飴を噛んで見せた。
「私の歯は丈夫みたい。あなたと違って虫歯はひとつもな―――ッ、ん」
「―――そのようだ」
レイが覆い被さってくる。
「……」
私はレイの顔を撫でた。
「――私の顔は今は何と書いてある?」
レイは熱い吐息混じりに言う。私は彼をもう止めなかった。
「秘密」
*
「…………お腹空いてきちゃった」
レイが私のお腹を撫でる。
「宅配を頼むか」
「こんな時間にやってるかな?」
「やっている店もある。時々注文することがある」
「甘いもの?」
「そういう店があればいいが」
そのまま横になっているとレイが飲み物を持ってくる。私に着替えをさせ、トイレに行かせそうやっててきぱきと世話を焼いているのを見るのは結構楽しい。きれいになったシーツの上で、再び横になる。レイは何を注文するか真面目に選んでいるみたいだった。
「一緒に暮らしていてもこんなかんじなのかな?」
レイは少し驚いた顔をした。
「それは……そうかもしれない」
「私はまだ、そうと決めることはできないけど、あなたと暮らすことに不安はないよ」
レイの瞳は不思議な色を湛え、私を見つめる。レイは何も言わなかったけれど、その手が慈しむように私の髪に触れた。しばらくの間、レイはそうしていた。
「……………レイ?」
「なんでもない」
「そう?ならいいけど……」
「注文するならここがいいだろう」
レイは端末を見せてきて、私は了承した。世界の隅にいるみたいにレイはどこか打ちひしがれていて、私は彼を慰めようとしたが何を言えばいいか、分からなかった。
「腹部は専門外だ」
「え?」
「だから、何が詰まっているかはわからない。基礎的な知識や医学的な経験ならあるが、やはり専門外だ」
いったい何を言い出したのか、一瞬分からなかったが、私はまたレイのお腹を撫でて見せた。
「大丈夫。これから美味しいものが入ってくる予定だから」
レイは私を咎めるではなく、抱きしめた。
「私はいつでも構わない」
「分かってる。有り難う」
一緒に暮らさなくても二人で過ごすことはできる。
「あなたの心臓のことを今度は教えて」
「それなら専門分野だ」
彼は重々しく頷いて見せた。私は笑った。やがて宅配を知らせるインターホンが鳴るまで、私たちは話し合った。肝心なことから自分達を遠ざける、それでいて、あなたを愛してます、という言葉で。