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今日は絶対言うんだ、だから友達に聞いて選んでもらったかわいい下着も買った。おばあ…

小説

#虎梓

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#虎梓


今日は絶対言うんだ、だから友達に聞いて選んでもらったかわいい下着も買った。おばあちゃんにも遅くなるかもしれないと連絡したし、おばあちゃんは楽しんでおいでと笑って送り出してくれた。今日の服装もなるべく大人っぽく見えるようなものを選んで、リップも塗った。誕生日当日のお祝いでなくてもよかった。仕事が忙しい虎が、当日の夜遅く会いに来てくれたのが嬉しかったから。だから、高塚梓はそう決めたのだ。

「私、虎が欲しい」

本条政虎はまじまじと梓を見つめて、口端をあげた。

「お前のもん、つってるのに、まだ足りないのかよ?」
「……そ、そうだよ」

政虎は少し目を見張った。梓が何を言わんとしているのか、分かったからだ。梓のスカートから伸びている足に手を沿わせる。梓の身体はびくついた。
「そりゃ、どういう意味かわかってんのか?」
「わかってる」
「焦るなよ?オレはいつでもいいんだぜ、それが十年後でもな。こっちの世界じゃ、16………17サイはガキなんだろ?」
「ガキじゃないよ」
その言い種が子供じみていて梓が気づいたように唇を噛んだ。
「ほらよ」
政虎が腕を広げる。
梓はぎゅっと眉を寄せる。
「梓ちゃん、カワイイお顔が台無しだぜ?」
「っ、そうやって子供扱いして……っ」
「してねえよ。惚れたオンナ扱いしてる」
「うそ」
「なぁーんで、この俺が惚れてもねえオンナを大事にしねえとなんねぇの?」
信用がないのかと言われて、梓は首を振った。
「虎が私を大事にしてくれてることはわかってるよ!だから…………」
「お返しにワタシをあげるって?」
「ち、ちが…………」
政虎は責めたりはしていなかった。面白がるような気配と冷静な視線だ。
「いいからこいよ」
促されて、梓はおずおずとその腕の中に飛び込んだ。思いの外強い力で抱き締められて、胸が詰まる。
至近距離で眼差しが絡む。まだ慣れない。虎のこんな瞳には。
「いい匂いがすんなァ」
「なにもつけてないよ」
「オレの好きな匂いだ」
「そう……きゃっ!」
政虎が不意に首筋を舐める。
「と、虎」
「………」
政虎は答えずにそのまま吸い上げる。
ちょうど髪で隠れる場所だ。本人は気づかないかもしれない。だが、痕は残さなかった。
「食わせてくれるんだろ?いつか」
「――――私は」
「見返りを求めてお前を大事にしてるわけじゃないぜ、それならとっくに奪ってる。前にも言ったろ?」
「――でも、でも、私だって虎が欲しいよ………………虎を大事にしたいの」
「嫁になってくれんだろ?」
「…………うん」
「初めて頷いたな」
「そうかな?」
「そうだ。まぁ、けど、お前が……」
「なに?」
「お前がオレ以上に好きなやつが出来たってんなら、その時は仕方ねえけどな」
「どういうこと?私が心変わりするってこと?」
「怒んなよ。心配はしてねえよ。そん時ゃ、また惚れ直させればいいだけだからな」
「……虎は私の気持ちが不安?」
答えを聞く前に唇を塞がれる。いつもより深いキスで梓の息が上がる。なんだかんだと政虎はこの世界にきてから必要以上には梓には触れようとはしない。
「っ、もう!誤魔化さないで」
べろりと唇を舐めあげて、虎は笑う。
「聞くのは怖ぇ」
「私は!」
「オレがお前をどうにかしそうで」
「…………えっ」
「怖がらせたくないし、傷つけたくはねえ。痛みを与えたくないし、怯えさせたくもねえ。お前がオレに触られるだけで、感じるようにさせてえし?」
梓は目を見開いた。
顔が真っ赤に染まる。
「リンゴチャン?」
「虎っ!」
「――だから、待つ。義理とか義務とかじゃなくて、お前のここが、オレを欲しくなるまで」
虎の指先が鎖骨から胸の間を通り腹部まで下りる。
梓は口をパクパクさせる。
ゆっくりとお腹全体を撫でられて、息が詰まった。
「先に決めとくか?セーフティワード」
「セーフティワード?」
「梓ちゃんは意地っ張りだから気持ちよくても嫌って言うだろ?そうしたら本当に嫌なときがわかんねえだろ、ま、オレは分かるんだがよ」
もう何を返せばいいのか、分からない。
墓穴を掘りそうだし、これで嫌と言うのも嫌だ。政虎が低く笑った。
「で、何にする?」
「何にって……………」
「どんなものでもいいぜ。リンゴとか、ランニングとか、好きなドラマの名前とかでもな」
「……………………」
「そんな顔すんなよ。煽られるだろ?」
想像でもしたか、と笑いを含んだ声でも言われて梓は、虎の胸を押した。
「想像ならしてるよ!だから、かわいい下着も買ったんだから!」
「…………へぇ」
梓は口を抑えた。
政虎の目が細められる。
補食者みたいに。
じっと、梓を見る。
梓はその視線に耐えかねて、後ろに下がった。身体を縮こめる。
「隠すなよ」
政虎が両腕をとり、広げさせる。服を脱いでもいないのに、下着をみられている気がして、梓は身体中が熱い。
こんな調子じゃ実際無理かもしれない。
政虎が満足したように息を吐いた。
「お前なら、やっぱ、おばあちゃん、かもな」
「え?」
「お前がオレ以外に助けを求めるヒーローはおばあちゃんしかいねーだろ?」
セーフティワードのはなしだ。
梓は考えてから頷いた。
「そうする」
わしわしと政虎は梓の頭を撫でる。
「じゃあ、もう帰れ。もう遅いだろ」
「………………帰りたくない」
「……………」
ため息が出そうになる。
むやみやたらと襲うほど野蛮でもないが、今日の梓は一段と美味しそうで困る。
「一応言っとくけど、卒業まで最低限手を出さねえぞ」
「…………キスもしてるのに?」
「あんなもん――――」
言いかけて、梓の恨みがましそうな視線に気づいた。
「虎は経験豊富だもんね」
可愛すぎるのでやめろと思ったが政虎は口には出さなかった。代わりに笑ってしまった。げらげら笑う政虎に気分を害して梓は怒る。
「笑うとこじゃないよ!私は初めてだし、いつもいっぱいいっぱいで」
「オレだってそうだよ、これ以上ねえくらい惚れて、こんなに我慢するのも、我慢してるのも悪くねえと思えるのも、お前が初めてだ」
「っ、虎はずるい!」
「好きつっとけ、梓が虎かっこいい、好き、大好きつってりゃ、オレは幸せなんだよ」
「…………もう帰る」
「梓」
「虎のことは世界一好きだよ!でも今は正直腹が立つよ!」
「…………」
「虎のバカ!」
「反抗期か?」
「違うよ!」
不貞腐れた梓を政虎は家まで送り届けた。

「覚えといて!一年後に思い知らせてあげるんだから!」

ぴしゃりとドアが閉まる。
政虎は笑う。一年後が末恐ろしい気がした。相手も自分も。

アナウンス
※現在プレイを休止しているものあります。
倉庫としておいています。

受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。