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No.41

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「おお、天使じゃん」花森が言う。マブイ人でもいるのかと思ったら白い羽根が生えた白…

文章,短編

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短文17

「おお、天使じゃん」
花森が言う。マブイ人でもいるのかと思ったら白い羽根が生えた白い服の人がいて、どこか疲れきったように項垂れてベンチに座っている。時々通りすがる人たちは一瞬ぎょっとしながら、関わるのを避けるように顔をそらし歩いていく。花森が声かけてみようぜと言う、声かけてどうすんだよ、と僕は言う。
「天使が困ってるなら助けないとだめだろ!」
「あれはほんとに天使なのか?」
「どちらにせよ困ってそうなら気になるだろ」
「いきなり殴りかかってきたらどうするの!」
「大丈夫、俺、喧嘩強いし」 
「それはそうだけど………」
暴力は優しさを助けるのか?花森はささっと天使らしきひとに声をかける。
「こんにちは。どうかしましたか?」
「@@%%!/③\○③『『『『」
「え?」
[[ー.!!.・・ あっすいません」
「いいえー」
花森は笑う。図太くてすごい。花森のそばにいると自分らしさを見失い溺れそうになる。
天使らしきひとは一旦咳払いし、
「この通り、充電が切れてしまったみたいで」
今の翻訳もうまくいかなかったみたいで、となにかの箱を背中からごっそり取り出した。全面黒のブラックボックスみたいだ。
一体これはなんなんだ。
花森は気にしない。
「スマホのバッテリーでいけます?typeCなんですけど、俺の」
「えぇ?なんですか、こわい」
「あ、あのー!」
「はい?」
思いきって声を上げる。天使らしきひとは疲れた顔をしているが、無理矢理微笑んだ。
その箱なんだとは聞けず、日和って言う。
「もしかして、天使なんですか?」
「はぁ、そうですが……仕事の依頼ですか?」
「仕事?!仕事ってなに?」
「色々です、人間のコーチングを主にやっていますが恋のおまじないとか、悪魔払いとかもやってて、料金は」
「あ。いえ、いいです。お金ないので」
天使は微笑んだ。
営業的アルカイック・スマイルだ。
「やっぱ天使だったじゃんよ!」
「自称ね」
「あの、充電」
「あ!typeCでいけた?」
「単3電池は?」
「単3電池?」
「ないです」
「バッテリーじゃだめ?」
「ここ、いれるから、だめなんです」
天使の人が箱の蓋をぱこんと開けた。別のものをいれるとパチパチするんです、と言う。
「はい!パチパチするとどうなるんですか?!」
花森が手を上げる。
天使のひとは目を伏せた。
「すごく痛いんです、羽からずっとパチパチしてて」
「それはひどいな、じゃあ俺!買ってくるっすよ!単3電池!待っててください!」
花森が走り出す。どこへ?と思ったがたぶんコンビニだ。そんな感じがする。
天使のひとと二人きりになると途端気まずい思いがした。通行人にはじろじろみられるし、花森の雰囲気で持っていた場が途端静まり返った。
「どうぞ、良かったら」
「あ、すいません………」
天使のひとがずれて、ベンチの隙間を空けてくれた。座ると背中に天使のひとの羽根が当たる。思いの他力強く硬かった。
「一応………」
天使のひとが名刺を差し出す。文字は読めないが数字はアラビア数字だった。どうやら電話番号らしい。
「恋のおまじないなら、手頃なお値段なので」
アルカイック・スマイル再び。
「そういうんじゃないですから……」
天使のひとは微笑んでいる。
僕はもう会話すまい、と真正面を向いて黙っていると花森が帰ってきた。
「これ!買ってきた!」
「ばか!単4だろこれ!」
お約束だ。

info
受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。