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No.43

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夕暮れを注いだお茶を神たちがゆっくりと飲み干した。これで朝から続いた宴は終わりだ…

文章,短編

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短文19

夕暮れを注いだお茶を神たちがゆっくりと飲み干した。これで朝から続いた宴は終わりだ。ほっと彼女は一息ついた。
「今夜は上弦の月らしい」
「いいな」
「美味そうだ」
「夜まで待つのもいいね」
「そうしましょうか」
彼女は目を見張った。
「もうありません、何も!」
「何もとは?」
「何もじゃないかね」
「何一つの間違いかい?」
「そうなのでしょう」
「何も」
「何もないか」
神々は笑った。
「創ればいいさ」
「破壊する方が先だろう」
「過剰になればどの道壊れるさ」
「適正があるべき姿だ」 
「どうとでも構わぬ」 
「酒はあるだろう」
彼女は声を張り上げた。
「明後日には!あります!」
「明後日」
「今日でもなく」
「明日でもなく」
「一昨日でもなく」
「明後日さ、明後日と言っている」
「うむ」
「うむ」
「うむ」
「うむ」
「うむ」
なら、明後日だ、と合意になった。彼女はほっとする。夕暮れも残り少なくなった。明後日にはなんとかなるだろう。ちゃぷちゃぷと満ちた空から波が引いていく。くわんくわんと鳴く宵鳥が、神々を促した。神々は、名残惜しそうに器を舐めたり、膝を掻いたりして、しばらく腰を上げなかったが、彼女がフライパンを慣らして、鋭く促すと文句を言いながら立ち上がり始めた。揺れる大地を踏みしめながら、彼女はお帰りの準備をして、照らすことを忘れた炎がゆっくりと呼吸した。短めに訪れた月が、ひもを大きく引っ張ると神々はよっこいせとばかり、元いた場所に帰っていく。ぱたぱたと羽ばたく式神を、手早く片付けながら彼女はほっと息を吐いた。頭上にはヨダカがいる。忘れた頃に訪れる嘶きを、あやしながら、静かに幕引きとなった。

彼女はぽたぽたと急須からこぼれた夕暮れを舐めとると、大きく伸びをして寝転がった、ああ、明後日だ。ぐるりと指を動かして、彼女はことさらそれがゆっくりくるように仕向ける。

こぼれ続ける夕暮れは、にわかに鈍く光り続けていた。

info
受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。