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2024/03/13
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ほろた
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2024/02/20
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ほろた
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2024/02/20
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ほろた
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短文20
母が女性と再婚するらしい。砂糖の入った衣がついた芋の天ぷらを食べながら母がそんな…
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短文20
母が女性と再婚するらしい。砂糖の入った衣がついた芋の天ぷらを食べながら母がそんなことを言い、まあいいんじゃいと答えた。お互い成人してるし、特に反対する理由はなかった。母は嬉しそうに微笑んだ。不意にどこか悲しみの面持ちになって、でも私が結婚する相手はちょっと特別だからもうあなたと会えないかもしれない、と続けた。不穏じみた台詞に、改めて母の結婚相手のことを聞いた。素朴で芯が強くて優しい人。仕事は?仕事はしてるの?すごく大変な仕事。会うことはできる?ちょっと聞いてみる、と母は携帯を手に取った。そこに花のかたちのお守りがぶら下がっていた。見覚えがあった。家から十分ほどの場所にある、長い長い階段を上がった先にある古い神社のお守りだ。お守りがかわいいから、SNSでバズったことがある。私たちには馴染みのものだった。そこにあることに違和感はなかったが、不思議な感じだった。母とお守り。母は、そういったものが嫌いだったはずだ。苦労して努力してお金を稼いで私を育てたから、世間への苛立ちのようなものだと勝手に感じていた。
「いいって」
「え?」
「サキさん、会ってくれるって」
サキさん。それが母の結婚相手だった。
サキさんは近所に住んでいるらしく、十分ほどで家に来てくれた。
さっぱりとした雰囲気の美人で目力が凄かった。年は母と同じくらいに見えた。互いに母に紹介されて、挨拶をかわす。
「母をよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
何を話せばいいのか、互いに分からなかった。嫌な沈黙ではなく、どこか気恥ずかしかった。
「聞いてるかな?私とのこと」
「いえなにも」
「それなのに結婚受け入れてくれたの?」
「母個人のことなので」
「さすが、みっちゃんの子供だね」
「そう?」
「そうだよ」
でも、とサキさんは面持ちを変えた。「今から言うことは本当だよ」そう言って、話してくれたのは、サキさんが実は神社にまつられている神様で、母を身請けし、二人で一旦神の世界にこもると言う話だった。一瞬教養のあるひとのジョークかと思ったがサキさんは真面目だし、母は否定しなかった。私は困惑した。
「つまり、どういうこと?」
「だから、人からみると、三途の川を渡るようなことだよ」
「母は死ぬってことですか?」
「厳密には違う。でもこの世界では同じようなものだよ」
はあ、と気の抜けた声が出た。
私は母をじっと見た。母はいつものように座っていた。
「まあ、じゃあそういうことで」
「え」
「お母さんそれでいいんだよね?」
「うん」
「まー、じゃ、はい」
「いいの?」
サキさんが私と母を見比べた。
「君たち、私が悪い奴だったらどうするんだ」
「その時はその時かも、ねえ」
「ねえ」
そうだったら母がボケても蒸し返します、と私は言い、母は忘れてるからいいわあ、と言った。サキさんは呆れ果て、笑い、有り難うと言った。
「大事にするよ、します、幸せにします」
「よろしくお願いします」
私たちはその後大谷翔平の話をして、犬を飼うのはどうかという流れになり、なあなあで解散した。
そして、母は結婚し、いなくなった。
誰もいなくなった部屋はがらんとしており、私は別の場所で暮らしているから、部屋は今月中に引き払うことになっている。引っ越す準備をしていた名残はあるが、ある日忽然と姿を消した、ように見える。それは間違いではないのだろう、これは神隠しでもあるのだから。
私は砂糖の入った衣の芋の天ぷらが食べたくなる。一人で作ってみたが、なんだか巧くいかなかった。それでも、一人で乾杯した。
神様が不在になった神社には近々代理のものがくるらしい。
本当のところ、何もかもよく分かってないが、私は母のことさえ、よく分かってないから、それは当然と言えた。
母よ、結婚おめでとう。
2024.3.13
No.50
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受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。
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母が女性と再婚するらしい。砂糖の入った衣がついた芋の天ぷらを食べながら母がそんなことを言い、まあいいんじゃいと答えた。お互い成人してるし、特に反対する理由はなかった。母は嬉しそうに微笑んだ。不意にどこか悲しみの面持ちになって、でも私が結婚する相手はちょっと特別だからもうあなたと会えないかもしれない、と続けた。不穏じみた台詞に、改めて母の結婚相手のことを聞いた。素朴で芯が強くて優しい人。仕事は?仕事はしてるの?すごく大変な仕事。会うことはできる?ちょっと聞いてみる、と母は携帯を手に取った。そこに花のかたちのお守りがぶら下がっていた。見覚えがあった。家から十分ほどの場所にある、長い長い階段を上がった先にある古い神社のお守りだ。お守りがかわいいから、SNSでバズったことがある。私たちには馴染みのものだった。そこにあることに違和感はなかったが、不思議な感じだった。母とお守り。母は、そういったものが嫌いだったはずだ。苦労して努力してお金を稼いで私を育てたから、世間への苛立ちのようなものだと勝手に感じていた。
「いいって」
「え?」
「サキさん、会ってくれるって」
サキさん。それが母の結婚相手だった。
サキさんは近所に住んでいるらしく、十分ほどで家に来てくれた。
さっぱりとした雰囲気の美人で目力が凄かった。年は母と同じくらいに見えた。互いに母に紹介されて、挨拶をかわす。
「母をよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
何を話せばいいのか、互いに分からなかった。嫌な沈黙ではなく、どこか気恥ずかしかった。
「聞いてるかな?私とのこと」
「いえなにも」
「それなのに結婚受け入れてくれたの?」
「母個人のことなので」
「さすが、みっちゃんの子供だね」
「そう?」
「そうだよ」
でも、とサキさんは面持ちを変えた。「今から言うことは本当だよ」そう言って、話してくれたのは、サキさんが実は神社にまつられている神様で、母を身請けし、二人で一旦神の世界にこもると言う話だった。一瞬教養のあるひとのジョークかと思ったがサキさんは真面目だし、母は否定しなかった。私は困惑した。
「つまり、どういうこと?」
「だから、人からみると、三途の川を渡るようなことだよ」
「母は死ぬってことですか?」
「厳密には違う。でもこの世界では同じようなものだよ」
はあ、と気の抜けた声が出た。
私は母をじっと見た。母はいつものように座っていた。
「まあ、じゃあそういうことで」
「え」
「お母さんそれでいいんだよね?」
「うん」
「まー、じゃ、はい」
「いいの?」
サキさんが私と母を見比べた。
「君たち、私が悪い奴だったらどうするんだ」
「その時はその時かも、ねえ」
「ねえ」
そうだったら母がボケても蒸し返します、と私は言い、母は忘れてるからいいわあ、と言った。サキさんは呆れ果て、笑い、有り難うと言った。
「大事にするよ、します、幸せにします」
「よろしくお願いします」
私たちはその後大谷翔平の話をして、犬を飼うのはどうかという流れになり、なあなあで解散した。
そして、母は結婚し、いなくなった。
誰もいなくなった部屋はがらんとしており、私は別の場所で暮らしているから、部屋は今月中に引き払うことになっている。引っ越す準備をしていた名残はあるが、ある日忽然と姿を消した、ように見える。それは間違いではないのだろう、これは神隠しでもあるのだから。
私は砂糖の入った衣の芋の天ぷらが食べたくなる。一人で作ってみたが、なんだか巧くいかなかった。それでも、一人で乾杯した。
神様が不在になった神社には近々代理のものがくるらしい。
本当のところ、何もかもよく分かってないが、私は母のことさえ、よく分かってないから、それは当然と言えた。
母よ、結婚おめでとう。