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ほろた
「円空―旅して、彫って、祈って―」を観てきた

円空ゥ?なんかしらん坊さんで教科書に載ってる人でしょ?信仰してるひとしか見てつまらんのでは?と思ってスルーしようと思ったのだが、NHKの円空CMに「なんだこのおおらかな……木彫りの仏像……」と思ってまんまと見に行ってきました。
そもそもにおいて、あべのハルカス美術館・はいい展示をする。「誘導」があんまりなくて「この空間にあるものを楽しんでください」という敷居の低さがいい。それでいて少ない展示物から「わかる」ようにツボを押さえていて、すごく気軽に見れてとても「得た」ような気分になれる。
今回、音声ガイドが諏訪部順一とあって「セブンさん!」となり音声ガイド代650円払っていざ入場するのだが、一発目にでかい仏像、一見トーテムポールのような大きな木彫りの仏像が迎えてくれる。
木彫りの仏像自体はのびのびしており、悠々と自然体で置かれているのだが、この諏訪部順一の音声ガイドが「ドラマ」にしてくる。一体この音声ガイドなしに見たらどういう感想に至れるのか、試してみてもよかったと思う。なんとなくとして、仏像の(ーUー)みたいな顏は、個人的には円空のおかんに似ているのではと思っており、全体的に仏像~における感覚はなんというか包み込む~ようなかんじがあった。
信仰・奉仕・人の為、という筋書きが敷かれているが、決して彼が義務とは思っていなかったことが伝わってくる。
彫刻としても見事で、なんとも楽しさにあふれているがやはり秀逸なのは晩年の仏像群だと思う。年を経たもののすばらしさをいつもこういう展示で思う。精緻で強いのは若年のものだが、やはり晩年しか作れぬものはあり、そういうものを知っているので「こんな歳なのにこんな技術で」みたいなことは思わずに済んでいるところがある。
展示最後の仏像に関して白州正子が余計なことを言っており、この人はこれを見てこの感想に至るとはという呆れ(音声ガイドのみわかる話)があった。
肝心なのは自分の感想が言語化できないことなのだが、なんというか、あれは自然信仰に至ったものではなく、「人」に至ったものである、ということであった。
円空の晩年がさみしくなかったことを祈っている。

おそらく音声ガイドの諏訪部順一の由来は展示物の両面宿儺の仏像に由来するもので、呪術の作品とかでは悪のような描かれ方をしているためか、こちらは地域に根付いた信仰による親愛の像としてのアプローチであり、そういうことを美術館がするのはとてもよいなと思った。何故か両面宿儺の御朱印が七百円で売っており、思わず購入してしまったのであった。
諏訪部順一、津田健次郎を起用する声優の「若者」へのアプローチがすごいなと思ったのは、客層と「円空の知名度」へのあれこれがあるからだと分かるものがあり、SNSでバズるといいなあと思った。ほんと展示物が親しみやすく、見やすいというので。こういうのも円空の人柄だろうし、それを十周年の展示にしたのもすごいなあと思う。

いい展示でした。


#美術館