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全年全月13日の投稿4件]

2024年5月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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ぐっと伸びをして、大きく息を吐いた。同じ姿勢で画面を見て作業をしていたものだから…

小説

#七マリ

小説

#七マリ


ぐっと伸びをして、大きく息を吐いた。同じ姿勢で画面を見て作業をしていたものだからさすがに疲れた、はっ、と気づいて振り返ると彼女は相変わらず居てくれて、本から目を上げて、休憩にする?と笑ってくれた。疲弊していた心が和らいで、ぎゅんと好きを充電していくのを感じる。
「ごめんな、ずっと作業しててさ」
「実くんは課題の締め切りがあるんでしょ?今日はわたしが会いたかったから無理言ったんだし、気にしないで」
「やっ、俺も会いたかったし、今日は会えて嬉しい……デス」
モデルの仕事と課題の締め切りが重なって、作業時間があんまり取れなかった。日曜日をなんとかフリーにしたものの、暫くの忙しさで二人の時間も取れていなかった。俺の言葉ににっこり嬉しそうに笑った彼女が、うん、わたしも嬉しい♥️と言ってくれて、つい近づいたが彼女はコーヒーを淹れるね、とさっと立ち上がってしまった。伸ばしかけた腕を自分の腕に回して、有り難う、と口ごもる。気恥ずかしさが首筋を上がるのを指で掻いて、彼女の読んでいた本に目線を落とす。資格を解説する本で、彼女はいくつか付箋をつけている。勝手に見るのは駄目な気がして、覗けなかったが気になって、ウズウズしていると、コーヒーのいい香りがした。しかもそれは喫茶アルカードのものだった。キッチンを見に行くと彼女がいたずらを成功したような顔で、「気付いた?」と笑う。
「うん、これ……」
「ふふ。最近お店来れなかったでしょ?店長に頼んで、コーヒー豆を分けてもらったの。店長も実くんの顔見れなくてさみしがってたよ?」
「そっか。俺もさみしがってるって伝えて?」
「伝えるだけでいいの?」
「来週は顔出せるから……」
「なんだか妬けちゃうね」
「へ?」
「店長と実くんって仲良しだね?」
「それって………どっちに妬いてる?」
「ふふ」
コーヒーがフィルターを通して落ちて行く。香りに誘われるように、彼女の後ろから抱きついた。
「今はだめ」
「ダメじゃないもん」
すり寄ると彼女がくすぐったそうに笑った。
「もう、コーヒー淹れてるのに」
「うん………今の俺、甘えん坊さんだから」
「よしよし」
彼女が空いた手で撫でてくれた。ドリップして、後は落ちていくのを待つだけ。いつもの馴染みのコーヒーの香りと彼女が居るのが妙に嬉しかった。ちゅ、と首筋に唇を寄せると、驚いたようにちいさく肩が跳ねた。
「あ、甘えん坊さん?」
「結婚して」
「ふふ」
「え?じゃないんだ……」
飢えるみたいに、好きで好きでたまらなくて、いつも彼女はふわふわとしてて、小さな子猫みたいに、じゃれては好奇心の向く方に行く、相手が自分じゃなくてもおなじなのかも、とひたすら焦れていたあの時、こんな未来が待ってるとは思わなかった。スキ、と言うと彼女は体を向けてきて、わたしも好き❤と言ってくれた。少しの間、抱き締めあって、でも彼女はちゃんとコーヒーを見ていたらしく、俺からするっと離れてマグカップにコーヒーを注いで、飲も、と無敵に笑う。その唇に吸い寄せられるみたいに啄んでキスをする、マグカップを反対側から支えてより深く唇を重ねる。ダメ、と呟いた彼女が上目で俺を見つめるから、実際のところなにが駄目か分からなかったけど、でも実際のところ、駄目なのは分かった。課題が待っている。現実。こんなん生殺しじゃん、と思って悔しさみたいなのが沸いたけど、コーヒー冷めちゃうよ、と言う彼女の言葉で部屋に戻った。

「うー………」
懲りず彼女を後ろから抱えるように座り込んで、コーヒーを飲む。いつもの味だ。荒ぶっていた心が落ち着いて行く。
「美味しい?」
「うん。美味しい。いつもの味だ」
「ほんとに?」
「………ちょっと違うかも?」
「そう!そうなんだよね、難しいんだ」
悩む横顔が真摯で、きれいだった。
「大学行くと思ってた」
つい溢れた言葉に彼女はハッとした顔をして、眉を下げた。
「ふふ」
「っ、ごめん、俺が言うことじゃなかった」
「いいよ、みんなに言われたし」
仲良いだろ?て教師に大学に進学するように勧めるように言われたこともある。彼女は学年一位の成績を持っていて希望する大学に進学できただろう。
「資格、取んの?」
「うん、その内」
彼女には見えないところがあって、拒絶されているわけじゃないけど、誰も入れない場所があるみたいだった。俺の落ち込みを察したように彼女は俺の手を握って、
「実くんみたいに、わたしも夢を持ちたくて」
「なんだって出来るよ」
「ふふ、有り難う」
今は美味しいコーヒーを淹れたいな、と言う。
「グルメな彼氏さんを満足できるようにね❤」
「カワイイ彼女さんの淹れてくれたコーヒーならそれだけで十分なのに」
「ひいきはよくないの!」
「ひいきって。それはさ、するなって言う方がムリじゃない?」
「心を鬼にして!」
「んーーー」
彼女がお願いするときみたいに上目で見詰めてくる。ムリじゃない?
「ごほん。がんばってみるけど」
「うん、わたしもがんばるね!」
つい笑ってしまって、コーヒーを飲み終える。彼女をもう一度抱き締めて、
「うし、充電完了!それじゃ、作業に戻りますかね。時間がきたら言ってくれたら送るし、眠たいなら寝ててもいいし、動画とかも好きにみて」
「うん、有り難う。寛がせていただきます」
「イイエ、なんのお構いもせず」
「………………あのね、実くん」
「ん?」
「我慢してるの、実くんだけじゃないんだからね?」
「…………………………へ?」
一瞬いいように解釈して思考回路が爆発しかけて、いやいやまさか、そんなこと、俺がすけべえさんなだけでしょ!と思って彼女をみたら、顔をそらした彼女の耳がうっすら赤くて、俺は、俺は?顔が熱い。ひぇ、みたいな声が出て、ドッキドキとうるさい鼓動と、じっとり手に汗が滲む感覚がわかる、身体が言うこと聞かないのに、彼女に尋ねる勇気が持てなくて、あ、エアッ、ナニが正解??!ぐるぐる思考が動いて、でも彼女の方はもう見れなかった。互いの沈黙は重くなかったし、何なら甘かった。

俺たちって付き合ってるんだな、て思った。今更なんだけど、俺って世界一幸せ者だ。

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ホールケーキを家族で食べる、その場面をみるのは今日が初めてだった。彼女を家族に紹…

小説

#七マリ

小説

#七マリ



ホールケーキを家族で食べる、その場面をみるのは今日が初めてだった。彼女を家族に紹介してから、あれやこれやと家に呼びつけられることが増え、その流れでクリスマスパーティーをすることになり、いや、何だよ、クリスマスパーティーって、そんな柄かよ、と呆れていたが飾りもツリーもずっと前から家に馴染んでいたみたいに当たり前にあって、ホールケーキがあって、家族が笑ってて、そのど真ん中に彼女がいる。すっげーな、と思う。すげえよほんと。マジ、どうなってんのか、わかんねえ。俺はなんだか耐えきれなくてそっと席を外した。家を出るわけにもいかないから、ベランダで暫くぼーっとしていた。
「実くん」
彼女は俺を探して、そばにきてくれた。
「………ごめんな、何か」
「どうして?」
彼女は笑ってて、嘘偽りなくて。俺の顔も心もくしゃくしゃになってしまって、彼女は気づいたように俺の手を握ったし、頬を撫でてくれた。
「俺が駄目だったんだろな、俺がもうちょいうまくやれてれば、もっとうまくいったのかな」
ずっと母さんも寂しくなくてさ。こんな、ぱっとあたたかな灯りのついた家になれたのかな。
「ふふ。実くんってご家族のこと、大好きだよね」
「は?!え?!な、なんでそーなるワケ?」
「実くんはそのままでいいんだよ、私はそのままの実くんが大好きだもん♥️」
「う」
そう言われると何も返せなくなる。無敵の言葉だ。
「あのさ、……うちの家族、イヤじゃない?イヤだったら、距離、置いてもいいし」
「全然。実くんは平気?」
「俺は、ごめん、まだちょっと、わかんないかもしれない。だって、ほらさ、………あんたは俺の大事なダイジな彼女なわけだし」
「ふふ。そうだね。実くんは私のとっても大事な彼氏だね♥️」
かわいい~!
いやそうじゃないんだよ。
「今の、俺ってカッコ悪いな」
「かわいいかも?」
「かわいい?!ドコが?!」
思わず近所迷惑になるほどの声が出た。はっとして口を抑える。
「そーゆとこ♥️」
「…………」
なんか、一生勝てない気がする……。というか、ずっと負けてるし、それが嬉しいんだけど。
「ね、ケーキ食べよう」
彼女は上目使いで俺を見て、腕を取る。あのさぁ、勝てるわけないじゃん。引っ張られるまま、リビングに戻る。扉を開けると家族が俺を見て、微笑ましいのとからかい顔とにやついた顔がそれぞれ見える。ぐっと眉間に皺寄せて睨んでやる、多分俺が彼女取られてすねて嫉妬したーみたいな流れになってるんだろう、まあそっちのほうがいいけど。俺のぐちゃぐちゃした気持ち、屈託を、彼女だけは分かっていて、俺を見て微笑んでくれる。あ、手を繋いでる、と姉が囃し立てるものの、絶対離してやるもんか。羨ましいだろ、とよくわかんないことを言いきってケーキ食べるときも手を繋いでたら、食べにくそうだからやめてあげんなさいよ、と言われても、彼女は照れて笑っているだけだし、そんなところが可愛い!とか言われて、そりゃそうだろと何故か得意気になってしまった。

切り分けたホールケーキは甘くて、やたら、甘くて懐かしい味がした。気を抜くと何故か泣きそうになった。

彼女をまだ実家に泊まらせるわけにはいかなかったから、猛攻してくる姉や追撃してくる親を振り切って、家を出た。
つんと冷える寒空に、また改めて手を繋いで、有り難うと言った。

彼女は笑って、それからなんでもないような横顔で、
「一緒にずっと生きていくってこういうことなんだね♥️」
と言った。数拍遅れて意味を理解して、でもその意味で合ってるのかも分からなかった。だから俺は間抜けに、「ずっと一緒に生きていってくれんの?」と尋ねた。

「そうだよぉ、え、ダメだった?」
「ダメじゃない!!!ダメなわけない!!」

さっきよりも数倍近所迷惑のくそでかボイスが出て、俺はまた口を抑えた。

「ふふ」
「ふふじゃなくて」
「実くん」
「うん?!」
「メリークリスマス」
「……はい。メリークリスマス、です」
「帰ろ」
どこに。
どっちに。
どっちでもいい、と彼女は言っている。言わなくても言ってて、でも俺は強欲で帰したくなんかなかったから、抱き締めて、キスして、急いで自分のマンションを目指すことにした。

クリスマスはだってこれからだ。
サンタさん、俺はもうプレゼントはいいです。いらないです。俺の欲しいものはここにあります。全部あります。

だから、それを誰も奪わないで。
お願い。

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レイはいつものように引き出しを開けた。そこには必ず糖分補給に必須の飴やチョコ、マ…

小説

#レイ主

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#レイ主




レイはいつものように引き出しを開けた。そこには必ず糖分補給に必須の飴やチョコ、マシュマロなんかがあり、しばし、定期的にレイはそれをつまむ。彼女に健康のことを口煩く言う割に彼は仕事中心の不健康な食生活を送っている。今日もそうしようとし、そして見慣れぬ箱を見つけた。かわいい雪うさぎのイラストが入った愛らしい箱だがレイは自分のために買うタイプではない。思った通りにメッセージを見つける。虫歯のひとは食べちゃダメ!もちろん、レイは虫歯なんかではない。欠かさずフロスしているし、磨きも忘れていない。前に痛んだことがあったがそれも過ぎ去った。だから、レイは箱を開けて、雪だるまみたいにころころしているスノーボールクッキーをひとつ食べた。溶けるような食感のそれをもう一度食べ、簡素に、なるべく無愛想に端末でメッセージを送った。

私は虫歯ではない。
スタンプがすぐ送られてくる。無言の意味を示す。呆れて黙っているつもりか?と送ると、理解しているみたいだね、とテキストが送られてきた。

声が聞きたくなった。テキストを読んだだけで、表情と声が再現できた。彼女はそれでもいたずらが成功したみたいな顔をしているだろう。

得意気だ。
そう返すと、意外と見つからなかったから、と言う。私が仕事をしていただけだ、と言うと、それは私も同じ、と返ってくる。随分暇そうだが、と送ると、今は休憩してるの、と言う。それから居場所が送られてきた。ランチを食べてるの、あなたもどう?

彼は立ち上がろうとした自分の足を諌めるのに気力を要した。残念だが、今から会議と手術の予定がある。彼女の表情が曇った気がした。ちゃんと食べた?食べた。お前の贈り物を。

分かった、と彼女が言った。差し入れするからそれを食べて。仕事は?と言うと病院の方角で用事があるから。彼は、また気力を要した。それなら、今すぐ顔を見せてくれ、とは送れなかった。

感謝する。
彼女が笑った。

彼は自分が休みを取っていないことに気づいた。メールで打診すると、調整してからになるが、必ず休みを取ってくださいと返信がきた。彼は息を吐いた。

彼女からもうメッセージは来ない。満足したのだろう、自分の親切さに。お節介さとも言うが。

彼はもう一度彼女からの贈り物を食べる。甘さが寄り添ってくれる気がする。彼は会議の時間までレストランを検索し、やがて彼女が気に入るだろう店をメモに残すと、レイ先生になるべく、仕事に戻った。検索している間に食事をした方がいい?彼女からの差し入れが届くのに、彼はそんな愚かなことをするほど、愚かではなかった。

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最初に気づいたのは安室から香る香水だった。立体的な甘く上品なもので、親しみや気安…

小説

#あむあず

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#あむあず

最初に気づいたのは安室から香る香水だった。立体的な甘く上品なもので、親しみや気安さというよりはゴージャスな花の香りだった。包み込まれるとうっとりとしてしまいそうな、そんな香りだ。珍しく?なのか、スーツを着た安室透は、今日は大丈夫でしたか、と言った。
「全部マスターのおかげですよ」
つい、拗ねるような響きになった。榎本梓は口を尖らせる。バレンタイン当日の今日、シフト予定だった安室透は朝イチで休みの連絡をしてきた。元よりマスターも入るシフトだったから、一日を通して店は回ったが、安室透目当ての客が何人もいて、店にいる梓に、よもや安室透を隠してはいないだろうな?と言わんばかりの厳しい目と探る目を向けてくるものだから、針の筵だった。ちくちくと言葉で牽制してくる客もいて、すっかり梓は疲れてしまったところ、あとは大丈夫だよとマスターが仕事を終えるように言ってくれたのだ。
「もうほんとマスターがいなかったら!私は恋の剣で串刺しでしたよ」
「恋の剣…………」
「ほんとそうなんですから!………だから、安室さんはいない方がよかったのかもしれませんね」
「すみません」
「本業は大丈夫なんですか?」
安室は瞬いた。梓は首をかしげる。
「探偵。大事な仕事だったんでしょう」
「あ、はい。愛を伝える日にも野暮なひとはいますから」
「ふふ、その言い方、キッドみたい」
変な間が出来た。
「って、安室さんはどうしてここに?」
梓の帰り道の途中だ。見慣れた車から、見慣れたひとが出てきて驚いたのだ。
「今からお店に出勤ですか?」
「ええ、まあ」
「それは………がんばってくださいね」
同情的な響きをもって梓は言う。安室は笑った。その魅惑的な香りと共に。
「香水、つけてます?」
「え、ああ、」
安室は自分の袖を嗅いだ。
「移り香みたいですね、依頼人と会っていたんでその時ついたかな?」
「…………」
バレンタインに呼び出すなんて、安室さん狙いなんじゃあ?と、梓は思ったが思っただけに留めた。
「梓さんは今日、シフト入って大丈夫でしたか?」
「あ、はい。今日はのんびりするつもりでしたから」
「バレンタインなのに?」
「……………どういう意味ですか?」
それは確かに今は付き合ってる人はいないが。梓は眉を寄せた。安室が、いや、と慌てた。
「良かったです。あの、今日のおわびも込めて受け取ってください」
安室はずっと下げていた紙袋を、梓に差し出した。名前だけは聞いたことがある、世界的コンクールで優勝したパティシエが作るという一粒が1000円以上する恐ろしいチョコだ。
「いいんですか?」
断る理由がない。自分を浅ましく思ったりしたが、食べたい!梓は自分に誠実でありたい。安室はにっこり微笑んだ。
「もちろん」
「でもこんなお高いチョコを」
微笑まれると梓は一瞬たじろいだ。
安室は梓の手に紙袋を握らせながら言う。
「あの時告白しましたし、本命なのはわかってると思いますが本命チョコです」
「え、やっぱり」
「梓さん、チョコに罪はないですよ」
安室にはありそうな言い種だ。梓は顰めっ面になる。
「ていうか、私、安室さんの好みじゃないですよね?」
「え?」
「まあ、チョコには罪はないですけどぉ」
どうせこれも冗談だろうという構えで梓はチョコを受け取る。冗談にしてしまいたい。冗談なんでしょう、そういう顔で安室を見る。安室は、眉を下げて笑った。
「送りましょうか」
「いえ、マスター一人ですし、お店に行ってあげてください」
あの店はマスターの店で、マスターさえいれば実質回る。二人ともわかっている。なにせ、働いているのだし。
「それじゃ、気をつけて帰ってください」
「有り難うございます、頑張って」
「はい」
安室からはいい匂いがする。それが少し他人行儀に思う。コーヒーの匂いのする安室だったらどうしていただろう。いつものエプロン姿なら。
好きって言うなら、今じゃない?と思ったが、安室は運転席に戻ってしまった。梓はそれを残念に思うべきか、安堵すべきなのかは分からなかった。走り出す間際、安室は少し頭を下げた。梓は、笑う。種も仕掛けもなく、チョコレートはチョコレートだった。

そういう、実は気の利かないところを、梓は可愛いなと思っていたりするが、それは安室には秘密だ。

アナウンス
※現在プレイを休止しているものあります。
倉庫としておいています。

受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。