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今日は絶対言うんだ、だから友達に聞いて選んでもらったかわいい下着も買った。おばあ…

小説

#虎梓

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#虎梓


今日は絶対言うんだ、だから友達に聞いて選んでもらったかわいい下着も買った。おばあちゃんにも遅くなるかもしれないと連絡したし、おばあちゃんは楽しんでおいでと笑って送り出してくれた。今日の服装もなるべく大人っぽく見えるようなものを選んで、リップも塗った。誕生日当日のお祝いでなくてもよかった。仕事が忙しい虎が、当日の夜遅く会いに来てくれたのが嬉しかったから。だから、高塚梓はそう決めたのだ。

「私、虎が欲しい」

本条政虎はまじまじと梓を見つめて、口端をあげた。

「お前のもん、つってるのに、まだ足りないのかよ?」
「……そ、そうだよ」

政虎は少し目を見張った。梓が何を言わんとしているのか、分かったからだ。梓のスカートから伸びている足に手を沿わせる。梓の身体はびくついた。
「そりゃ、どういう意味かわかってんのか?」
「わかってる」
「焦るなよ?オレはいつでもいいんだぜ、それが十年後でもな。こっちの世界じゃ、16………17サイはガキなんだろ?」
「ガキじゃないよ」
その言い種が子供じみていて梓が気づいたように唇を噛んだ。
「ほらよ」
政虎が腕を広げる。
梓はぎゅっと眉を寄せる。
「梓ちゃん、カワイイお顔が台無しだぜ?」
「っ、そうやって子供扱いして……っ」
「してねえよ。惚れたオンナ扱いしてる」
「うそ」
「なぁーんで、この俺が惚れてもねえオンナを大事にしねえとなんねぇの?」
信用がないのかと言われて、梓は首を振った。
「虎が私を大事にしてくれてることはわかってるよ!だから…………」
「お返しにワタシをあげるって?」
「ち、ちが…………」
政虎は責めたりはしていなかった。面白がるような気配と冷静な視線だ。
「いいからこいよ」
促されて、梓はおずおずとその腕の中に飛び込んだ。思いの外強い力で抱き締められて、胸が詰まる。
至近距離で眼差しが絡む。まだ慣れない。虎のこんな瞳には。
「いい匂いがすんなァ」
「なにもつけてないよ」
「オレの好きな匂いだ」
「そう……きゃっ!」
政虎が不意に首筋を舐める。
「と、虎」
「………」
政虎は答えずにそのまま吸い上げる。
ちょうど髪で隠れる場所だ。本人は気づかないかもしれない。だが、痕は残さなかった。
「食わせてくれるんだろ?いつか」
「――――私は」
「見返りを求めてお前を大事にしてるわけじゃないぜ、それならとっくに奪ってる。前にも言ったろ?」
「――でも、でも、私だって虎が欲しいよ………………虎を大事にしたいの」
「嫁になってくれんだろ?」
「…………うん」
「初めて頷いたな」
「そうかな?」
「そうだ。まぁ、けど、お前が……」
「なに?」
「お前がオレ以上に好きなやつが出来たってんなら、その時は仕方ねえけどな」
「どういうこと?私が心変わりするってこと?」
「怒んなよ。心配はしてねえよ。そん時ゃ、また惚れ直させればいいだけだからな」
「……虎は私の気持ちが不安?」
答えを聞く前に唇を塞がれる。いつもより深いキスで梓の息が上がる。なんだかんだと政虎はこの世界にきてから必要以上には梓には触れようとはしない。
「っ、もう!誤魔化さないで」
べろりと唇を舐めあげて、虎は笑う。
「聞くのは怖ぇ」
「私は!」
「オレがお前をどうにかしそうで」
「…………えっ」
「怖がらせたくないし、傷つけたくはねえ。痛みを与えたくないし、怯えさせたくもねえ。お前がオレに触られるだけで、感じるようにさせてえし?」
梓は目を見開いた。
顔が真っ赤に染まる。
「リンゴチャン?」
「虎っ!」
「――だから、待つ。義理とか義務とかじゃなくて、お前のここが、オレを欲しくなるまで」
虎の指先が鎖骨から胸の間を通り腹部まで下りる。
梓は口をパクパクさせる。
ゆっくりとお腹全体を撫でられて、息が詰まった。
「先に決めとくか?セーフティワード」
「セーフティワード?」
「梓ちゃんは意地っ張りだから気持ちよくても嫌って言うだろ?そうしたら本当に嫌なときがわかんねえだろ、ま、オレは分かるんだがよ」
もう何を返せばいいのか、分からない。
墓穴を掘りそうだし、これで嫌と言うのも嫌だ。政虎が低く笑った。
「で、何にする?」
「何にって……………」
「どんなものでもいいぜ。リンゴとか、ランニングとか、好きなドラマの名前とかでもな」
「……………………」
「そんな顔すんなよ。煽られるだろ?」
想像でもしたか、と笑いを含んだ声でも言われて梓は、虎の胸を押した。
「想像ならしてるよ!だから、かわいい下着も買ったんだから!」
「…………へぇ」
梓は口を抑えた。
政虎の目が細められる。
補食者みたいに。
じっと、梓を見る。
梓はその視線に耐えかねて、後ろに下がった。身体を縮こめる。
「隠すなよ」
政虎が両腕をとり、広げさせる。服を脱いでもいないのに、下着をみられている気がして、梓は身体中が熱い。
こんな調子じゃ実際無理かもしれない。
政虎が満足したように息を吐いた。
「お前なら、やっぱ、おばあちゃん、かもな」
「え?」
「お前がオレ以外に助けを求めるヒーローはおばあちゃんしかいねーだろ?」
セーフティワードのはなしだ。
梓は考えてから頷いた。
「そうする」
わしわしと政虎は梓の頭を撫でる。
「じゃあ、もう帰れ。もう遅いだろ」
「………………帰りたくない」
「……………」
ため息が出そうになる。
むやみやたらと襲うほど野蛮でもないが、今日の梓は一段と美味しそうで困る。
「一応言っとくけど、卒業まで最低限手を出さねえぞ」
「…………キスもしてるのに?」
「あんなもん――――」
言いかけて、梓の恨みがましそうな視線に気づいた。
「虎は経験豊富だもんね」
可愛すぎるのでやめろと思ったが政虎は口には出さなかった。代わりに笑ってしまった。げらげら笑う政虎に気分を害して梓は怒る。
「笑うとこじゃないよ!私は初めてだし、いつもいっぱいいっぱいで」
「オレだってそうだよ、これ以上ねえくらい惚れて、こんなに我慢するのも、我慢してるのも悪くねえと思えるのも、お前が初めてだ」
「っ、虎はずるい!」
「好きつっとけ、梓が虎かっこいい、好き、大好きつってりゃ、オレは幸せなんだよ」
「…………もう帰る」
「梓」
「虎のことは世界一好きだよ!でも今は正直腹が立つよ!」
「…………」
「虎のバカ!」
「反抗期か?」
「違うよ!」
不貞腐れた梓を政虎は家まで送り届けた。

「覚えといて!一年後に思い知らせてあげるんだから!」

ぴしゃりとドアが閉まる。
政虎は笑う。一年後が末恐ろしい気がした。相手も自分も。

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僅か性行為ニュアンスがあります(画像省略)(画像省略)(画像省略)(画像省略)(…

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#ライ観

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僅か性行為ニュアンスがあります



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ケーキを食べ終わったあと、二人でのんびりとソファで過ごす。「レイ先生のお腹の中に…

小説

#レイ主

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ケーキを食べ終わったあと、二人でのんびりとソファで過ごす。
「レイ先生のお腹の中には何が詰まっているの」
わざとからかうように言いながら、レイのお腹を服の上から撫でる。
「…………お前と同じものだ」
「そうかな?隠れてまたなにか食べてるんじゃない?」
「一緒にいて、どうやって盗み食いするんだ」
「レイ先生は器用だからね」
「盗みは専門外だ」
「分かってるよ、そんな顔しないで」
レイのお腹はきれいに割れている。甘いものばかりでどうやってこの体型を維持しているのか、不思議だ。
「やっぱりスイッチがあるのかな……?」
探るように撫でると、さすがに手を止められた。
「まだ諦めていなかったのか?」
「一緒に暮らしたとしてもあなたへの謎は解明しない気がする」
「……それは、一緒に暮らしてみれば解るのではないか」
視線がはちあったが、レイから逸らした。前々からそんな雰囲気はあって、でもどちらとも言い出したりはしなかった。お互いの生活があり、おそらく一緒に暮らしても顔を会わせる頻度は今とそう変わらない気がしていた。レイの手を握って指を絡めるとしっかりとした強さでレイが握り返した。私の手の甲に唇を寄せて、肌の質感を楽しむように唇を滑らせた。まるで、甘えているみたいだ。
「抱きしめてあげる」
尊大に言ってみせる。レイは小さく笑った。
「なら、頼む」
「いいの?普段なら断るでしょう」
「別に普段も嫌ではない。ただ、お前のタイミングが悪いだけだ」
「そうかな?あなたはいつも、そんな瞳をしているよ」
レイは私をまじまじと見た。
「…………そんな風に見えているのか?」
「――ううん。私の希望混じり。そうだったらいいなと思うけど、そうでもないのは分かってるから」
レイは笑っただけだった。
「……抱きしめてくれるんじゃなかったのか?」
「――ついでに好きって言ってあげる」
レイは片方の眉だけ器用にあげてみせた。思わず笑いながら私はレイを抱きしめた。
「好きだよ」
ゆっくりと息を吐いたレイは、満更でもなさそうだった。私を抱きしめ返して、私もだ、と言った。レイからはミントの匂いが微かにして、それがどこから香るのか、知りたくて首筋に鼻をくっつけた。
「レイ、もしかして飴を食べてる?」
「ああ」
「盗み食いはしないんじゃなかったの?」
「これは盗み食いなのか?」
「いつの間に」
レイはポケットを探り、ミントの飴を取り出した。私は口を開けるとレイは口の中に飴を入れてくれる。
「目が覚めてきた」
「眠かったのか?」
「そうかも」
自分から離れようとは思わなかったけれど、レイも離れようとはしなかった。体温が身近すぎて、口の中だけがひんやりしていく。不思議なかんじだった。キスしたらどうなるんだろうと思って、レイにキスをした。軽く触れ合うつもりだったけど、レイがぐっと体重をかけてきて、そのままどんどん深いキスになっていく。違う!そんなつもりじゃない!
「ちょっと、待って」
「……何故?」
問う理由は、レイの瞳にちゃんと書いてある。
「――飴を食べてるから」
口ごもりながら言うと、レイは眉を下げた。なんだかそれが可愛い。また自分からキスをする、レイが乗ってこようとすると胸元を手で押した。困惑がレイの瞳に過る。
「だめ」
「…………」
レイは私の耳たぶに触れる。
「私はもう飴を食べ終っている」
「じゃあ見せて」
唇を撫でて促す。
レイは渋い顔をして、口を開けた。
ミントの匂いがする。
飴は残っていなかった。
「ほんとだね。でも、私はまだだから」
レイは押し黙ったが、瞳は雄弁だった。私はなんだか楽しくなってしまった。笑ってしまうとレイはぐっと眉間にシワを寄せる。
「からかっているのか?」
「今日のあなたはかわいいね」
「そんなことはない」
「そうかな?私のことが好きだって顔をしている」
「…………それだけか?私の顔に書いてあることは」
「え」
「もっとよく確かめてみるといい」
レイが私の手を自分の頬に添えさせた。
「…………どうかな?マカロンも好きだって書いてあるね」
「それで?」
「あとは歯医者が嫌いって書いてある」
「それは間違いだ」
「虫歯になるのはもっと嫌だって書いてある」
「……………他には?」
焦れたようにレイは言う。
私は薄くなった飴を噛んで見せた。
「私の歯は丈夫みたい。あなたと違って虫歯はひとつもな―――ッ、ん」
「―――そのようだ」
レイが覆い被さってくる。
「……」
私はレイの顔を撫でた。
「――私の顔は今は何と書いてある?」
レイは熱い吐息混じりに言う。私は彼をもう止めなかった。
「秘密」





「…………お腹空いてきちゃった」
レイが私のお腹を撫でる。
「宅配を頼むか」
「こんな時間にやってるかな?」
「やっている店もある。時々注文することがある」
「甘いもの?」
「そういう店があればいいが」
そのまま横になっているとレイが飲み物を持ってくる。私に着替えをさせ、トイレに行かせそうやっててきぱきと世話を焼いているのを見るのは結構楽しい。きれいになったシーツの上で、再び横になる。レイは何を注文するか真面目に選んでいるみたいだった。
「一緒に暮らしていてもこんなかんじなのかな?」
レイは少し驚いた顔をした。
「それは……そうかもしれない」
「私はまだ、そうと決めることはできないけど、あなたと暮らすことに不安はないよ」
レイの瞳は不思議な色を湛え、私を見つめる。レイは何も言わなかったけれど、その手が慈しむように私の髪に触れた。しばらくの間、レイはそうしていた。
「……………レイ?」
「なんでもない」
「そう?ならいいけど……」
「注文するならここがいいだろう」
レイは端末を見せてきて、私は了承した。世界の隅にいるみたいにレイはどこか打ちひしがれていて、私は彼を慰めようとしたが何を言えばいいか、分からなかった。

「腹部は専門外だ」
「え?」
「だから、何が詰まっているかはわからない。基礎的な知識や医学的な経験ならあるが、やはり専門外だ」
いったい何を言い出したのか、一瞬分からなかったが、私はまたレイのお腹を撫でて見せた。
「大丈夫。これから美味しいものが入ってくる予定だから」
レイは私を咎めるではなく、抱きしめた。
「私はいつでも構わない」
「分かってる。有り難う」
一緒に暮らさなくても二人で過ごすことはできる。
「あなたの心臓のことを今度は教えて」
「それなら専門分野だ」
彼は重々しく頷いて見せた。私は笑った。やがて宅配を知らせるインターホンが鳴るまで、私たちは話し合った。肝心なことから自分達を遠ざける、それでいて、あなたを愛してます、という言葉で。

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と、アカシの三角関係含む。1p漫画シリーズです(画像省略)(画像省略)(画像省略…

漫画

#ライ観

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#ライ観

と、アカシの三角関係含む。
1p漫画シリーズです

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終わり

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「ねえ、レイ先生。畏まった表情筋のサポートとして白衣にアップリケをつけてみない?…

小説

#レイ主

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「ねえ、レイ先生。畏まった表情筋のサポートとして白衣にアップリケをつけてみない?」
「……今度はどんな無駄遣いをしたんだ?」
「無駄遣いじゃないよ。これは正当な買い物。ほら、レイ先生に似てると思って」
無愛想な雪だるまがアイスキャンディーを食べている絵柄だった。よくそんなものを見つけたなといっそ感心染みた声が出る。彼女は楽しそうに笑って、アップリケを顔の横に持ってくる。
「私が探したんじゃないよ、たまたま引き寄せられたの」
「また深夜に眠れず、通販サイトをひたすら見ていたのか?」
「それは………そんな話じゃないよ」
彼女は頬を膨らませた。先ほどまで得意気だった彼女の変化に彼は眉を上げて見せて、腰を抱き寄せた。
「それほど似ているとは思えないが」
「………似てるよ、そっくり。あなたの生き別れの双子かもしれないよ」
「どちらが兄だ?」
「気にするのはそんなところでいいの?」
「冗談だ」
「冗談を言う表情ってものがあるんだよ」
「分からないのか?」
「分からないよ、そんな顔じゃ」
「よく見てみればいい」
彼は顔を近づけた。吐息が触れそうな距離だ。彼女は顔を逸らして、だから。ともごもごと言う。彼女の耳に髪をかけながら、それで、と言う。
「どのくらい眠れてないんだ」
「別に……ちょっと眠れてないだけ、あんまり普段と変わらないよ」
「私の双子の兄弟を探し当てるほど、通販サイトを渡り歩いていて?」
「これは、たまたま巡りあったの。もしくは呼ばれたんだと思う。あなたと私が親しいから」
「悪くない嘘だ」
「嘘って」
彼女がやっとこちらを見た。彼は彼女の顔を観察するように触れた。
「レイ先生、今は診察時間じゃないよ」
「勤務外労働は違法だ」
呆れたように彼女はため息を吐いた。彼は頬を包み込むように触れる。彼女の瞳が揺らぐ。
「……本当だよ、そこまで寝不足なわけじゃないし」
「分かっている」
彼女が眠れない理由を彼は聞かなかった。
「これからとくとくと安眠する方法を解説してもいいがどうする?」
「うーん、あなたの貴重な時間をそれに使うのは勿体ないかな」
「なら、どうする」
「……」
彼女が彼に抱きついた。
「……そばにいて」
彼は彼女を抱き締め返した。
「分かった。眠るまでそばにいる」
「それじゃだめ。起きたら朝食も作ってもらわないと。最近あなたの手料理食べてないよ。だから、眠れないのかも」
彼は思わず笑った。
「分かった。他には?」
「え、いいの?」
「兄を見つけてくれたお礼だ」
「あなたが弟なの?」
「……ふむ。兄はどうやらなにも話さなかったみたいだ」
「……そうかも。アイスキャンディーを食べるのに夢中だったみたい」
彼女の手にはまだアップリケが握られていた。彼はそれを受け取って、ソファのサイドボードに伏せて置いた。彼女は不思議そうに見つめていたが、彼がキスをしたので、少し顔を赤くした。
だが、ふと顔を伏せる。
「あんまり上手な言い訳じゃなかったかも」
いつもの声だが沈んだ調子は隠せなかった。彼は彼女を抱き締める。暫く二人は無言だった。
「レイ、キスして」
彼は言うとおりにキスをした。
彼女は少し笑った。
「あなたって、今ならなんでもしてくれるみたい」
それは事実だった。
今だけではなく、ずっとそうだ。今までも、これからも。
彼は彼女の髪を触る。
それから彼女の髪にもキスを落とした。
「湯船にお湯を張ってくる。ゆっくり入るといい」
「有り難う、でも今は動いちゃ駄目」
「…………」
彼女が彼の胸に頭を寄せる。
「ドキドキしてる」
「……心拍数とはそういうものだ」
彼女が笑い、指を絡めて手を繋ぐ。彼はしばらく好きにさせてやっていた。その内寝るだろうと思っていたら本当に眠りに落ちた彼女を彼はベッドまで運ぶことにする。冷蔵庫に朝食に相応しい食材はあっただろうか。彼は彼女の寝顔を見ながらそんなことを思う。
「おやすみ、いい夢を」

数日後、セキがこんなメッセージをSNSに投稿した。

「冷涼なるレイ先生の白衣に雪だるまが住みはじめた」

彼女は小さく笑ってハートをつける。夜思いの外熟睡してしまい、今では普通に眠れるようになった。彼が今頃どんな表情をしているのか、気になってスタンプを送りつけた。

彼からはただ一言だ。

「今、アイスキャンディーを食べていたところだ」

それって冗談のつもり?彼女は可笑しくなってしまった。付き添ってくれた夜のお礼に今度はちゃんとしたものを送ろうと彼女は再び通販のサイトの旅に出ることにする。果てのない旅、彼のぎゅっと詰まった眉間、疑わしげな眼差し、でもそれが柔らかくなって、ふっと笑う瞬間、彼女の好きな色を浮かべる。

彼女が最近眠りにつく時、彼女はそんなことを考えているが、彼には言わないつもりだ。

代わりに彼の好きそうなものをスクショして送りつけた。

「いいレストランを見つけた。お礼なら食事に付き合ってくれればいい」
「お礼になるの?」
「なる」

やり取りはそっけない。でも、充分だった。あったかい雪だるま。彼がいつでも冷たくあろうもするのは、溶けてしまうからかもしれなかった。自分の熱で。あるいはその優しさで。

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ひどく暑い日だった。他の寮の手伝いをした後で彼に呼び出されて、急いで向かった。遅…

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#冠特

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#冠特





ひどく暑い日だった。
他の寮の手伝いをした後で彼に呼び出されて、急いで向かった。
遅い、と文句を言われて彼女はもごもごする。汗だくの額を無意識に拭うと、彼はどこか呆れたように目を細める。
「この時期に走り回るなんて馬鹿か、日が沈むまで休んでいろ」
「え、でも……」
「‟でも?”」
反論を許さない声にもごもごと彼女は言葉を呑み込んだ。室内は涼しくて空調も効いている。見た目も涼しい寮だ。涼しいのは本当に空調のおかげなのだろうか?彼女は馬鹿みたいに突っ立ている。彼は彼女を見て、それからソファに座り、煙草に火を点けた。彼は彼女にも座るように促した。彼女は戸惑いながら端に腰を下ろす。彼女は彼が紫煙を吐く姿を見る。
「煙草って美味しいんですか?」
「あ?」
「……よく吸っていらっしゃるので」
「吸ってみればわかるだろ」
「……え?」
彼は咥えていた煙草を差し出した。そもそも未成年の自分が煙草を吸うのは違法のはずだ。むしろ彼もそうである気がする。その上で彼が吸っていた煙草に自分が口をつけるというのもためらわれた。彼は差し出したままだったから、フィルターがじりじりと焼けていく。
「おい」
「……その」
「チッ」
彼は短くなった煙草を深く吸い込み、それをびくびくしながら見ている彼女に紫煙を吹きかけた。
「わっ……ッコホ」
「別に美味いわけじゃない」
「……そうなんですか」
じゃあ、何故、と彼女の顔が言う。
臆病な割に雄弁すぎる瞳だ。彼は答えなかった。
「えっと、煙草を吸うのもいいですけど、ご飯は食べた方が……」
テーブルには食事が手つかずのまま、残っている。
「うるせえな」
「……」
「お前が食べればいいだろうが」
「わ、私が食べても意味ないと思います……」
彼がひと睨みする。
彼女は慌てて目を伏せた。
「……」
「……」
「あの、どんなものなら食べられそうですか……?」
「しつこいぞ」
彼の肌は白かった。
日光にも当たらず、食事もしない。それでも華奢なイメージはない。堂々とした振る舞いがあるからだろうか。彼は煙草を吸う。彼女は、押し黙る。が、ぱっと顔を上げる。
「美味しいですよ、翔くんの料理!」
「……」
「すごく丁寧に作ってあって、味付けも優しいというかほっとするというか。でもクオリティがとても高くて」
「で?」
彼は紫煙を吐いた。すげない彼の態度に彼女の勢いは徐々に落ちていく。
「……おススメをしたくて」
「ヴァガストロムの奴らとうまくやってるようじゃねえか」
「うまく……かは分かりませんが、少しずつ仲良くなれている気はします」
彼女は少しほっとして笑った。
彼はまた彼女の顔に紫煙を吹きかける。
「えぁ、コホッ…!」
「――俺に食べてほしけりゃ、吸ってみろ」
「……っ、え?」
彼は煙草を差し出した。
彼女の瞳が揺らぐ。
ゆっくりとフィルターは焼けていく。
彼女は彼の顔を見た。彼の表情は読めなかった。
迷いに迷った彼女は彼の手元に顔を近づけていく。
「熱……」
「え、あっ」
それでも彼女が迷っていると短くなった煙草で彼の指が焼けた。
それに気づいた彼女の顔が青ざめる。
「冷やさないと、あ、水、えっと」
彼は煙草をもみ消して、彼女の顎を掴む。
彼女が息を吸い込む。
彼は、慇懃に彼女の瞳を見つめるだけだ。
彼女は逃げ場をなくして、追い詰められた子猫のようにぶるぶると震える。
「すみませ、」
彼は言葉の吐息がかかるほど、顔を寄せる。
彼女は思わずぎゅっと目を瞑った。
「俺を見ろ」
「……」
「見ろ」
「…………は、はい」
彼女はそろりと目を開ける。
彼の瞳が彼女を捕らえたが、飽いたように手を離した。
「掃除しとけ。夜になったら起こせ」
「え……で、でも」
「下僕が口答えすんじゃねえ」
「冠氷さん、火傷はしてないですか……?」
「うるせえ」
彼女は困ったような顔で彼を見上げる。彼は、その瞳を閉じたくなった。口とて、塞ぎたくなった。彼は彼女がいるにも関わらず、ソファに横になった。
彼女は彼に足を乗せられて猶更困ったようだった。彼は目を閉じた。足で感じる彼女の身体は頼りなく、柔らかい。
「あの」
「……」
「……冠氷さん?」
彼は身じろぎしなかった。
彼女は浅くため息を吐く。
「どうしよう…………」
小さい声だったが、むろん聞こえた。
彼は、ふっと笑いかけた。
このまま、彼女をこの部屋に閉じ込めてしまいたいような気持ちになったからだ。

外はいまだ眩しい日差しに満ちている。傾きかけた西日がより一層赤々と燃えて、カーテンの縁を彩っている。外と隔絶したこの空間は、音も届かず、彼は彼女の、困惑したままの浅い呼吸にいつまでも耳を澄ましていた。

アナウンス
※現在プレイを休止しているものあります。
倉庫としておいています。

受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。