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オタクの雑記

日記だったり語ってみたり

No.1360

これが答えだ…


チャットGPTくんによるほろたと暁月くんセンシティブ話なんですけど、てか、「ほろた」はわたしであるが、もはや「物語上の」でもあるんだけどそれでもまあ人は選ぶので隠します。




夜は、熟れた果実みたいに甘く静かだった。
ベッド脇のスタンドを落とすと、部屋の色が蜂蜜みたいに低くなる。シーツの皺が細い影をつくり、窓の向こうの街は遠く、波みたいにゆるく瞬いていた。

「……ねえ、暁月くん」

呼ばれて顔を向けると、ほろたは枕に頬を半分埋めて、まつげの影だけが濃い目をしていた。
少し間を置いて、ためらうみたいに言葉が降りる。

「上に乗って」

「え?」

思わず声が間抜けに漏れる。
乗る、ってその、言葉だけだといろいろ想像が暴走する。俺は苦笑して、頭を掻いた。

「ほろた、それは――重いだろ。大丈夫か」

「大丈夫。乗って。ちゃんと、わたしに“重み”を置いて」

“重み”。その言い方に、胸のどこかがひっかかる。
彼女はわがままを言うときの顔をしていた。甘さを纏って、譲らない目。
逃げ場を塞ぐんじゃない。こっちの「構え」をやさしく眠らせる、あの目だ。

「ほろた、押しつぶしはしないけど、肩に手はつくぞ。全部は預けない」

「ううん、最初はそれでいい。でも、途中で――腕、どけて」

本気だ。
俺は息を短く吐いて、ベッドに手をつき、彼女の真上に体を滑らせる。
膝と肘で支え、胸の影を彼女の胸の影に重ね、いつでも退ける角度を保つ。
布団がかすかに鳴って、ほろたの吐息があがる。蜂蜜色の灯りの中で、彼女の目が細くほどけた。

「……重くない?」

「まだ軽い。ちゃんと乗って。わたし、いま、“重い”がほしい」

“重いがほしい”。
言葉が胸の内側に沈んで、あたたかく広がる。
俺は肘の角度を数度緩める。
肩が降りる。胸骨がそっと触れる。
布団がさらに沈んで、二人の間の空気が逃げ場所を失い、やわらかい圧に変わる。

「――っ」

ほろたの喉の奥で、小さな音が生まれた。
痛みの音じゃない。受けとる音。
俺は息を合わせる。吸って、吐いて。
彼女の呼吸が俺の胸に当たって、跳ね返ってくるたび、体の内側で波が低く往復する。

「暁月くんの重み、落ちてくる……。ね、もっと」

「合図ちょうだい。痛かったらすぐ言え」

「言う。だから――来て」

合図を信じる。
俺はもう一段、肘をほどく。
肩越しに見えるシーツの皺が、海図みたいに曲がっていく。
胸の前で、ほろたの手が探るように動いて、俺の背中に回る。
掌が広がり、指が肩甲骨の上をゆっくり撫でる。
逃げ道ではなく、着地地点を示されている感じ。

「重い……」

やっと言った。
言いながら、目が笑っている。
額が触れて、小さな汗が混じる。
俺は片手だけ彼女の頬に添える。指先で輪郭を確かめ、親指でまぶたの線をなぞる。
彼女は目を閉じない。俺を見たまま、飲み込むみたいに息を吸う。

「重いけど、好き。ここに落として。……ね、腕、どけて」

来た。
俺はゆっくり、ほんとうにゆっくり、肘を抜く。
肩が、胸が、腹が、順番に沈む。
体重をばらして、広く置く。
一点で押さない。面で渡す。
布団が低くきしんで、二人で同じ傾斜に滑り込む。

「……ほろた」

「うん」

「苦しくないか」

「苦しい。でも、ちょうどいい。わたし、いま“押しつぶされないまま押し包まれたい”の」

言い得て妙だ、と思う。
包むために、押す。
押すために、広げる。
矛盾は、ここでは矛盾じゃない。
肩先から胸までの面に、彼女の体温がのぼってきて、俺の体温と溶け合う。
骨に硬さがあるぶん、肉はやわらぐ。
重みは、痛みに変わらず、重みのまま深くなる。

「もう少し」

彼女の手が、俺の背を押す。
わずかに、ほんのわずかに、さらに落とす。
胸の中心がぴたりと合って、鼓動の拍が絡まる。
一拍ごとに、布団の下の小さな空気がため息みたいに逃げる。
そのたび、彼女の唇がかすかに震える。
俺は迷わず、口を重ねた。
深くしない。
逃がさない。
離して、また置く。
重みの下で、キスは重さを持つ。

「……ん、重い。重いのに、落ち着く」

「落ち着く?」

「うん。世界が静かになる。動けないのに、居場所が広くなる。――ね、もっと、胸、預けて」

胸を預ける。
預けるって、簡単な言葉だけど、やるときは勇気がいる。
彼女はもうとっくに預けている。
なら、俺も。
俺は腕をほとんど寝かせ、両手で枕の端を掴んで固定に回す。
逃げるためじゃない。安定のために。
支えを床に流し、面のほとんどを彼女に返す。

「……っ、いい」

彼女の声が、胸骨に直接触れる。
皮膚じゃなく、骨伝いに届く声。
その声が好きだ。
骨の奥で鳴る大きさになったとき、俺たちは同じ場所にいる。

「重い、重いのに、安心して、眠くなる。ねえ、暁月くん、わたしをつぶさないで、でも、逃げないで。わがままだね」

「わがままでいい。俺もだ。……ここで、ほろたを止めたい」

「止める?」

「そう。動かないでいてほしいって意味じゃなくて、ここに留めるって意味。逃げ場じゃない“居場所”に」

「止めて。わたし、重みで止まりたい」

「任せろ」

額をもう一度重ねる。
汗が小さな橋になる。
彼女の髪がこめかみに触れて、濡れた糸みたいにまとわりつく。
呼吸を合わせる。
吸って、吐いて。
胸の面が、同じ拍で上下する。
上下はあるのに、前後はない。
進まないのに、満ちていく。

「……ほろた」

「なに?」

「重さ、増すぞ」

「うん」

合図をもらって、俺は最後の数パーセントを置く。
重力が働く方向に、素直に落ちる。
落ちながらも、潰さない広さを守る。
面で渡し、骨で受け、肉でほどく。
全身の注意が、彼女の中の「痛い」から遠ざけ、「好き」に寄り添う。

「重い……すごく……」

言いながら、彼女の指が俺の背中でほどける。
逃げる手じゃない。受け取って、余白ができた手。
俺はその手を拾って、頭の上へ導き、指を絡める。
掌と掌の間に、体温の薄い湖みたいな熱が溜まる。
そこに息を一つ、吹きこむ。
音はない。
でも、湖面が震えた気がした。

「暁月くん」

「ん」

「重い、って言いながら、嬉しい。矛盾してるのに、矛盾じゃないんだね」

「そうだな。重さって、安心の単位にもなる」

「名言」

「今のは言い訳だ」

「許す」

彼女の許しは、印鑑みたいに喉元に押される。
俺はそこへ短いキスをひとつ落として、次の呼吸で唇を離す。
重みは置いたまま。
重みがキスの深さを決める。
重みがあるほど、深くしなくてよくなる。
深さを増す代わりに、密度が上がる。

「……眠くなってきた?」

「なってる。重いから」

「もう少しだけ、起きてろ」

「うん」

目を閉じた彼女のまぶたに、蜂蜜色の灯りが薄く透ける。
俺はその薄さが好きだ。
光ってほどけるくせに、触るとちゃんとそこにいる。
まぶたにそっと口づけると、彼女は笑って、俺の胸に額を押し当てる。
重みと重みが、継ぎ目なく合わさって、ベッドの底へとろりと沈んでいく。

「ね、腕、もう一本も、どけて」

「……マジか」

「大丈夫。ちゃんと合図するから」

「信じるぞ」

最後の支えを外す。
もう逃げられない、じゃない。もう逃げる必要がない、だ。
世界が一拍だけ止まり、次の拍で、ふたりの間を通る空気がとても細くなる。
それでも、窮屈ではない。
狭さの中に広さが生まれる瞬間がある。
今がそれだ。

「……っ、重い。重いけど、嬉しい。ねえ、暁月くん、ほんとに“いる”って感じがする」

「いるよ」

囁くと、彼女の目がすこし潤む。
涙ではない。重みの副作用みたいな、温度の光。
俺はその光を逃したくなくて、もう一度だけ唇を重ねた。
長くしない。
離して、息を混ぜる。
重みを揺らさないまま、呼吸だけで世界を攪拌する。

「重い……でも、好き……」

「ありがとな。言葉にしてくれて」

「言わないと、暁月くん、遠慮するから」

「バレてるな」

「うん。――今は、遠慮しないで」

了解、と胸の中で答える。
重みは、俺のものだけじゃない。
彼女がくれた“受け皿”の重さでもある。
俺はその皿の縁を壊さないように、重さの中でじっとする。
動けないことが、動いているより雄弁になる。
静かさが、飽和していく。

やがて、彼女の呼吸がさらに深く、長くなる。
鼓動が、俺の胸の拍に寄り添って、同じ速度に落ち着く。
「落ち着いた?」と尋ねようとして、やめた。
問いは要らない。
重みの下で、彼女の体が答えになっている。
俺は片手だけを彼女の髪に滑らせる。
汗で少し重くなった前髪を、額から外側へ。
指が通るたび、細い糸が静かに歌う。

「……寝ちゃってもいい?」

「いいよ。俺が起きてる」

「うん……じゃあ、重いままで、いて」

「ああ。ずっといる」

そのまま、彼女はまぶたを落とす。
重みは、俺を地面に結ぶ錨みたいになって、ベッドごと海底に優しく固定する。
動かないのに、満たされ続ける。
呼吸の波だけが、静かに岸を洗って、夜を磨く。

「重い……」
彼女が最後にもう一度だけ言う。
今度は、満足のため息を混ぜながら。
言い終える前に、もう眠りに片足を踏み入れていて、語尾がやわらかく溶ける。

俺は小さく笑って、額を寄せる。
「おやすみ、ほろた。――ここにいる」

返事はない。
代わりに、腕の中の体がさらに深く沈んで、重みが少しだけ増す。
それが合図だ。
俺は目を閉じず、灯りの薄さの中で彼女のまつげの影を眺めながら、重みのすべてを胸の奥にしまい込んだ。
“重い”は、安心の単位だ。
彼女が求めるなら、何度でもここに落としていく。
潰さず、離れず、逃げず。
預ける重さで、守る。

夜は、静かに、長く、二人を同じ深さまで連れていった。

畳む


すごく、よい。