Entries

Icon of admin
ほろた
ヴ~(  -_・)

子守り一日してスターレイルちょっとさわって、つかれたので寝よう。
頭ばかになってかいた七マリ



ぐっと伸びをして、大きく息を吐いた。同じ姿勢で画面を見て作業をしていたものだからさすがに疲れた、はっ、と気づいて振り返ると彼女は相変わらず居てくれて、本から目を上げて、休憩にする?と笑ってくれた。疲弊していた心が和らいで、ぎゅんと好きを充電していくのを感じる。
「ごめんな、ずっと作業しててさ」
「実くんは課題の締め切りがあるんでしょ?今日はわたしが会いたかったから無理言ったんだし、気にしないで」
「やっ、俺も会いたかったし、今日は会えて嬉しい……デス」
モデルの仕事と課題の締め切りが重なって、作業時間があんまり取れなかった。日曜日をなんとかフリーにしたものの、暫くの忙しさで二人の時間も取れていなかった。俺の言葉ににっこり嬉しそうに笑った彼女が、うん、わたしも嬉しい♥️と言ってくれて、つい近づいたが彼女はコーヒーを淹れるね、とさっと立ち上がってしまった。伸ばしかけた腕を自分の腕に回して、有り難う、と口ごもる。気恥ずかしさが首筋を上がるのを指で掻いて、彼女の読んでいた本に目線を落とす。資格を解説する本で、彼女はいくつか付箋をつけている。勝手に見るのは駄目な気がして、覗けなかったが気になって、ウズウズしていると、コーヒーのいい香りがした。しかもそれは喫茶アルカードのものだった。キッチンを見に行くと彼女がいたずらを成功したような顔で、「気付いた?」と笑う。
「うん、これ……」
「ふふ。最近お店来れなかったでしょ?店長に頼んで、コーヒー豆を分けてもらったの。店長も実くんの顔見れなくてさみしがってたよ?」
「そっか。俺もさみしがってるって伝えて?」
「伝えるだけでいいの?」
「来週は顔出せるから……」
「なんだか妬けちゃうね」
「へ?」
「店長と実くんって仲良しだね?」
「それって………どっちに妬いてる?」
「ふふ」
コーヒーがフィルターを通して落ちて行く。香りに誘われるように、彼女の後ろから抱きついた。
「今はだめ」
「ダメじゃないもん」
すり寄ると彼女がくすぐったそうに笑った。
「もう、コーヒー淹れてるのに」
「うん………今の俺、甘えん坊さんだから」
「よしよし」
彼女が空いた手で撫でてくれた。ドリップして、後は落ちていくのを待つだけ。いつもの馴染みのコーヒーの香りと彼女が居るのが妙に嬉しかった。ちゅ、と首筋に唇を寄せると、驚いたようにちいさく肩が跳ねた。
「あ、甘えん坊さん?」
「結婚して」
「ふふ」
「え?じゃないんだ……」
飢えるみたいに、好きで好きでたまらなくて、いつも彼女はふわふわとしてて、小さな子猫みたいに、じゃれては好奇心の向く方に行く、相手が自分じゃなくてもおなじなのかも、とひたすら焦れていたあの時、こんな未来が待ってるとは思わなかった。スキ、と言うと彼女は体を向けてきて、わたしも好き❤と言ってくれた。少しの間、抱き締めあって、でも彼女はちゃんとコーヒーを見ていたらしく、俺からするっと離れてマグカップにコーヒーを注いで、飲も、と無敵に笑う。その唇に吸い寄せられるみたいに啄んでキスをする、マグカップを反対側から支えてより深く唇を重ねる。ダメ、と呟いた彼女が上目で俺を見つめるから、実際のところなにが駄目か分からなかったけど、でも実際のところ、駄目なのは分かった。課題が待っている。現実。こんなん生殺しじゃん、と思って悔しさみたいなのが沸いたけど、コーヒー冷めちゃうよ、と言う彼女の言葉で部屋に戻った。

「うー………」
懲りず彼女を後ろから抱えるように座り込んで、コーヒーを飲む。いつもの味だ。荒ぶっていた心が落ち着いて行く。
「美味しい?」
「うん。美味しい。いつもの味だ」
「ほんとに?」
「………ちょっと違うかも?」
「そう!そうなんだよね、難しいんだ」
悩む横顔が真摯で、きれいだった。
「大学行くと思ってた」
つい溢れた言葉に彼女はハッとした顔をして、眉を下げた。
「ふふ」
「っ、ごめん、俺が言うことじゃなかった」
「いいよ、みんなに言われたし」
仲良いだろ?て教師に大学に進学するように勧めるように言われたこともある。彼女は学年一位の成績を持っていて、彼女さえ希望すれば好きな大学に進学できただろう。
「資格、取んの?」
「うん、その内」
彼女には見えないところがあって、拒絶されているわけじゃないけど、誰も入れない場所があるみたいだった。俺の落ち込みを察したように彼女は俺の手を握って、
「実くんみたいに、わたしも夢を持ちたくて」
「なんだって出来るよ」
「ふふ、有り難う」
今は美味しいコーヒーを淹れたいな、と言う。
「グルメな彼氏さんを満足できるようにね❤」
「カワイイ彼女さんの淹れてくれたコーヒーならそれだけで十分なのに」
「ひいきはよくないの!」
「ひいきって。それはさ、するなって言う方がムリじゃない?」
「心を鬼にして!」
「んーーー」
彼女がお願いするときみたいに上目で見詰めてくる。ムリじゃない?
「ごほん。がんばってみるけど」
「うん、わたしもがんばるね!」
つい笑ってしまって、コーヒーを飲み終える。彼女をもう一度抱き締めて、
「うし、充電完了!それじゃ、作業に戻りますかね。時間がきたら言ってくれたら送るし、眠たいなら寝ててもいいし、動画とかも好きにみて」
「うん、有り難う。寛がせていただきます」
「イイエ、なんのお構いもせず」
「………………あのね、実くん」
「ん?」
「我慢してるの、実くんだけじゃないんだからね?」
「…………………………へ?」
一瞬いいように解釈して思考回路が爆発しかけて、いやいやまさか、そんなこと、俺がすけべえさんなだけでしょ!と思って彼女をみたら、顔をそらした彼女の耳がうっすら赤くて、俺は、俺は?顔が熱い。ひぇ、みたいな声が出て、ドッキドキとうるさい鼓動と、じっとり手に汗が滲む感覚がわかる、身体が言うこと聞かないのに、彼女に尋ねる勇気が持てなくて、あ、エアッ、ナニが正解??!ぐるぐる思考が動いて、でも彼女の方はもう見れなかった。互いの沈黙は重くなかったし、何なら甘かった。

なんか、俺たちって付き合ってるんだな、て思った。今更なんだけど、俺って世界一幸せ者だ。