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タグ「京園」を含む投稿8件]

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バレンタイン。事後(????)(画像省略) (画像省略)

漫画

#京園

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バレンタイン。事後(????)


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運命だと思った、二度、運命だと思った。笑われてる女子がいた、大声を上げて、なりふ…

小説

#京園

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運命だと思った、二度、運命だと思った。笑われてる女子がいた、大声を上げて、なりふり構わず、拳を振り上げて、顔を目一杯動かして、ひたむきに友人を応援している姿は面白かったのだろう、実は彼女を一度見たことがあった、他校の生徒を探して、キャーと騒いでいる姿を本当は見たことがあった、そういう女子を、気にかけたことはなかったが、彼女はよく動くから、一瞬目についた。視界に触れて、それで、一旦忘れたのだと思う。

彼女の色素の薄い茶色の髪が、暴れるように乱れて、大きく開けた口が、いけー!とか、やれー!とか、物騒な言葉をもたらして、友人の、一挙一動にハラハラドキドキして、祈るように目を伏せて、そして射抜くような気合いの入った眼差しで、蘭!あんたならできる!と叫んだ。

自分の神経のひとつひとつが、細胞が、彼女にまっすぐ向かっていって、すんなりと理解をした、これが、恋なのだと。
同時に分かっていた、これは、叶うことのない恋なのだと。


「どうしたの、真さん」
瞬きする。
「いえ、ちょっと時差ボケがあったみたいで」
「大丈夫?ホテルで休もっか」
「え?いえ、大丈夫です」
「いーのいーの、一度アフタヌーンティーの試食に来てくれって頼まれてたから。近くのホテルだし、このまま行こう」
彼女は自然な動きでタクシーを呼び止めて、ホテルの名前を告げる。そういえばこの前蘭がね、と楽しそうに話をしているのを聞いている間にタクシーは目的のホテルに到着する。鈴木財閥の所有するホテルだった。彼女は、ボーイに名前を告げて支配人に取り次いで貰うように頼み、彼女のことを知っているホテルマンの一人が園子さまと、ラウジンカフェへと案内する。ドリンクが運ばれてくるまでごく自然で、彼女は特にその事を殊更誇示するでもなく、当たり前に享受している。彼女はお喋りを続けていて、それは普段近くにいない時間を埋めてくれるようで愛らしかった。支配人が現れて、彼女は彼が休める部屋を用意してくれる?と言う。それから部屋にアフタヌーンティーを用意して、と告げる、支配人は当然と応じて後は待っていれば眺めのいい部屋に案内されるだけだった。実家の旅館を思い出す。オーシャンビューの一望を彼女はまあまあだね、と笑って、ほら、ゆっくり休んで、と自分をベッドへ促した。もごついていると、いいからいいから、と引っ張って、

「それともなあに?寝かしつけてくれってこと?」

と、いたずらっぽく笑った。子守唄なら歌えるかも、と言うので、聞いてみたい気がしたが、これ以上は墓穴な気がして、ベッドに潜った、自重を包み込むようなゆったりとしたマットレスに清潔なシーツ。掛け布団もふわりと軽く温かかった。外はあんなにも暑いのにここは、冷房が効いていて、寝具の中にいるのが、心地よかった。快適だった。目を瞑っているとマットレスが少し揺れて、彼女の気配がした。もう、眠った?言葉は喉に貼り付いて、彼女の柔らかで華奢な指先が自分の髪を触るのが分かった。

「んー絆創膏剥がしちゃおっかな」

思わずびくりと、身じろぎするとくすくす彼女は笑った。

「ウソウソ、やっぱり起きてたんだ」
「眠りに落ちる寸前でした。でも本当にいいんですか?退屈ではありませんか」
「いいの。滅多に会えないのに、ゆっくり過ごすのって逆に贅沢でしょ」
起きたら、アフタヌーンティーしましょ、と彼女は言う。盛大に甘やかされている気がして、不意に羞恥が昇った。それを気取られぬように、布団を被った。
「おやすみ、真さん」
彼女が微笑んだ、のが伝わる。彼女の周りの空気が揺れて、いつもそれが自分のところまで振動する。共鳴する。それが、独りよがりな心情だと分かっている。

そっと彼女を伺った。彼女は、窓の外を眺めている。真夏の青空は、痛々しいほど青く、目映い。ゆっくりと彼女は伸びをして、自分にとっては不釣り合いなほど高級な一室であっても、彼女にとっては日常のものでしかなく、自宅のような様子で、ソファに座り、携帯を触る。

実家の旅館に彼女がやって来たのはたまさか偶然で、理由は未だ分からない。運命だと思って、嫌がられると思って、嫌われていると思って、執着していると思われて、執着していて、どんな理由をつけていたって、人命を救ったと警察に表彰されたって、自分はただ、好きな人に理由をつけて付きまとっていたのは、事実だったから。彼女を助けられてよかった、と思う。こぼれ落ちて行くのに耐えきれなかったのだ、理由をつけて、固執した。好きだったから。好きだから。


自分だって、応援されたい。
あの時、乱暴な衝動で沸き上がった、強烈な自我を。あんな風にひたむきに、愛されたいと願ってしまったことを。


やわらかな寝具の中で、彼女を覗き見している、まだそんなことをしていて、好きだって言われてからも、自分が見つけたように、彼女が誰かを見つけたり、見つけられたりするかもしれなくて。なのに、遠く離れている。

目を瞑る。
夏は彼女に相応しくて、彼女の生き生きとした情熱は、太陽に劣ることはなくて、想像とした夏と今は違っている。ゆっくりと起き上がって、ずれた時間が、太陽の存在が、歯車を少し軋ませて、どうしたの?のどが渇いた?とやってきた彼女を、掴まえた。

優しい肉体は柔らかで、自分はもっと強靭になろうと思った、世界が滅んでも。

彼女だけは生きてほしい。
頭を押し付けた彼女の胸部からとても早い鼓動が聞こえて、血の流れを感じて、ぎこちなくあやすみたいに、彼女が背中を撫でた、悪い夢でも見たの?

呼吸して、呼吸して、自然と彼女の体臭が入り込んできて、壊れないように腕の力を調節した、ーー少し。

疲れているみたいです。

名前に反して嘘をついた、狂わぬように。ここが、嘘みたいだから。海の音が聞こえる、遠くからどこまでも。響いてくる。


二度、運命だと思った、浅ましさで引き寄せた、彼女を救ったのではなくて、あの時救われたのは、自分こそだったのだ。

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鈴木財閥のご令嬢に恋人ができたいう話はまことしやかに、社交界に広がっていった。あ…

小説

#京園

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鈴木財閥のご令嬢に恋人ができたいう話はまことしやかに、社交界に広がっていった。あの鈴木財閥の後継者になるのは彼女という話が有力で密かに彼女の地位を狙う男たちにとっては衝撃的な話だった。彼女を誰が落とせるかという密かなゲームは彼女が18歳になる頃始まる予定で、開催まであと数ヵ月だった。すわどこかの著名な一家との政略結婚かと調査の手を伸ばしてみるものの、件の恋人が400戦無敗の衝撃の貴公子ということで、ますます彼らは混乱した。何故?格闘家とご令嬢か?そうなると気に入ったのは彼女の方でその地位を使ってわがまま放題に彼を手篭めにしたのだろうか、それならばまだ付け入る隙はあると勇み足で彼らは、ご令嬢と格闘家が出席するというパーティーに出る情報を聞き付けて参じたものの、脆くもその企みは崩れ去った。

相思相愛ではないか。

初々しいほど場の空気に飲まれて緊張する彼を、彼女はからかいながらエスコートしてゆく。色素の薄い彼女の淡い紫のやわらかな光沢のドレスと彼の鍛えられた肉体を映えさせるようにあつえられた直線のスーツは見事に調和しており、それは二人のバランスの良さを見事に示すものであり、お互いが話すときにじっと相手を見つめる眼差しは思いやりがあって、温かった。蕩けるような甘さも混在しており、仕草ひとつとっても、誰かが付け入る隙などまるでないように思えた。

こうしてみると彼女はひどく魅力的な女性で、気の強そうなミーハーな女に思えていたものの、その心根がひたむきに一人の男に向かう時、なんとも言えぬ、豊潤で大きな器を持つ、とても愛情深い清らかな女に思えたのだった。

彼らは自らの見る目のなさに失望したものの、そういった不埒な視線を気づかないわけがない彼であったから、彼女の横顔からすっと目を外し、刀の閃きに似た鋭い視線を真一文字に彼らに向かって切りつけるが如く、浴びせた。その瞬間彼らは冷や水どころか氷水を浴びせられたように震え上がった。決して野蛮ではない獣は、むしろ知性があるがゆえに恐ろしいのだと彼らはその時初めて思い知ったのだ。これは自分達の手に追えないと、彼らは表向きはスマートな素振りのまま、手足などはがくがく震えながらその場を撤退した。

その事に何も気づかない彼女は、彼らの後ろ姿を見て、あら!来ていらしたんだわ。挨拶できなかったわね、と軽やかに笑った。彼は、途端何もわからなくなったように混乱したような面持ちで、園子さんの言うとおりです、と応えた。それってつまり、どういうこと?と眉をあげて見せた彼女は彼の彼女を好きすぎる余りの不審な行動に慣れていたから、今度はあれを食べましょ、と新たな料理へと彼を導く。彼は微笑んで、付き従ってゆく。彼は分かっていたし、彼女は分かっていた。ここが、一種の狩り場であることは。しかし、それでも構わなかった。二人いて、何も困ることはなかったからだ。

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「真さん、今から思ったことは全部口に出して」唐突な命令、いえお願いだった。京極真…

小説

#京園

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「真さん、今から思ったことは全部口に出して」

唐突な命令、いえお願いだった。京極真は、ゆっくりと瞬いて、その言葉の意味を咀嚼しようと試みた。
「……つまり、どういうことですか?」
「お腹が空いたなーと思ったら、お腹空いたなーって言ったり、喉が渇いたなーと思ったら喉が渇いたなーって言うの」
「なるほど」
「私が好きだなーと思ったら好きだなーって言うのよ」
「えっ」
「なぁに?不満なの?」
上目遣いで睨まれて、京極真は咄嗟に浮かんだ言葉を打ち消した。
じっと彼女が見つめている。
彼女のお願いであれば出来ることなら叶えるつもりだ。
出来ないことでも叶えられるように精進するつもりだ。
つもりではいけない。
そうする、と決めている。
決めているのだが、京極真は困った顔をした。
「もう、真さん、困ってるなら困ったなーって言うのよ」
「ええと、これはどういう意図での行為なのですか」
「だって普段から真さんが何考えてるのか、気になるじゃない」
京極真は思考を無にした。
思わなければ、何も言わなければ、嘘ではなくなる。
すっと息を吸った。
無我の境地へ至ろうとする京極真を、彼女がゆさゆさと揺らす。
「ちょっとちょっと!いきなり修行モードに入ってない!?」
「そ、そんなことは」
「嘘。絶対そう。どうせ、何も考えないようにすれば何も言わなくていいと思ったんでしょ」
「…………はい」
ふり絞るように京極真は頷いた。
不実もいけない。
いつでも誠実であらねば。
でも、どうしたらいいのだろう?
彼女のお願いはいつも愛らしくて、どんなことでも聞いてしまいたくなる。
自分にもっと力や才能があれば、どんなことでも出来るのに、いまだこぶし一つ境地に至らず、修行の身だ。
彼女のころころと表情の変わる瞳が、彼をじっと見つめている。
彼は掌を握りしめた。
あの、憎らしい気障な怪盗ならば彼女の喜ぶ言葉ひとつ、軽快に容易に紡げるのだろう。
甘いささやきで彼女の耳を満たすことが出来るのかもしれない。
たった一言で彼女に喜びや笑みをもたらすことが出来るだろう。
そう考えると深く囚われるようで、彼は背筋を伸ばした。
肉体は心で、心は肉体だ。
彼女はどこか心配そうに彼を見つめている。
「真さん、そんなに思い悩まなくても、」
「園子さん」
「……なに?」
彼は、勇気を振り絞った。
「いつも、園子さんのこと、可愛いと思っています。すみません、だから思っていることは何でも言えません」
「…………どうして?」
彼は気づかなかったが、彼女の声には甘い媚が含まれていた。
彼はこれでもかと拳を握り、拷問の末に吐き出す言葉のように打ちひしがれて告げた。
「自分は、あなたのことになると、自制が利かないからです」
固く握った拳に柔らかい手が添えられた。
「そうなの?」
「そうなんです」
「そうなんだ、へぇー」
「軽蔑されるかと、思います」
「へえー」
「申し訳ない」
「ふーん、そうなんだー」
彼は罪悪感で顔を上げられなかった。
視線を上げて彼女の顔を見られなかった。
その時の彼女の微笑みを見られなかった。

「それじゃ許してあげる」
「あ……」
彼はそこでやっと顔を上げる。
「面目なく……」
「いいのいいの!ただの思い付きだったし!」
「有難うございます」
「そうだ、さっきおしゃれなカフェ見つけたんだ。一緒に行こ?」
「はい、園子さんの行きたいところであればどこでも」

きゅ、と彼女が手を握った。
彼はどっと手汗が滲むのが分かった。汚い、とわかっていて、離す事も拒否もできなかった。
彼女は微笑んでいる。さっきと同じ笑い方で。彼は、動揺してやはり気づかない。
自分の頭に浮かぶ考えを言葉にするとやはりどうなるのか、そのことばかり考えていた。

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漫画

#京園

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いっそう遠く輝いている星を眺める、マコト、船に乗らないかと言われた、どうしてと尋…

小説

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星々の話

いっそう遠く輝いている星を眺める、マコト、船に乗らないかと言われた、どうしてと尋ねたらお前は辛抱強く体力がある、漁師に向いていると大柄の男が言った、日焼けした肌で、酒を飲んだのか赤ら顔だ、乗らない、と彼は答えた、どうしてだ、地上にいる人間と戦い、一番つよくなるより、海と戦う方がずっと困難だ、と男は言った、それはそうかもしれない、海に勝てるかは分からない、巨大な果てのない相手だ、それはそうだろう、考えてみろ、と男は笑う。今、好きな女と離れてるんだろう、好きな女を置いていくお前は船乗りにぴったりだ、男はそう言って酒を飲んだ。彼はそうかもしれないと思った、彼は戦いを除けば物静かな男で、年相応のシャイさもあって控えめで謙虚な男だった、だから彼を恐れるものはいなかったが、彼が丁寧であればあるほど、強さの象徴として受け取られた。彼が彼女に強く恋をしているなんて、実際彼女も分かっていないのかもしれない。彼女は感覚で分かってるだけだ、彼は裏切らず、ひたむきに誠実に自分を好きなのだと。それは深層意識で気づいているだけだったから、彼女は言葉にしなかった、気づいてるのはそんなふたりをそばで見ている彼女のごく親しい人々だけだった。だから、こんな遠い地で彼が彼女に深く恋い焦がれているなんて、気づかれることはごく稀だった。そんなに好きならそばを離れるわけはない、と言われてしまえばそうだ、彼は薄情ではなく、むしろずっと愛情深かった。


スマートフォンでメールを打ちかけて、指は止まった。元気ですか、短いスカートなど履いてはいませんか。最近寒いので、体を大事にしてください。だって伝えたいことはこんなことではなかったから、彼は眉根を寄せた。彼女が夢中になるあの怪盗のように言葉を紡げていたら…………………


男は眠っていた。店員に目をやるといつものことだというように、肩を竦めた。彼は店を出て、宿に向かった。港沿いを歩いた。潮風を浴びた。故郷の海とはまた違った海だ。波の音だけは変わらない。猫がいて、魚を食べていたが彼を見て食べかけの魚を咥えて素早く去っていく。海鳥が鳴いていた。ゆっくりと彼は歩調を緩めた。

彼は不慣れな操作でスマートフォンで海の写真を撮った。彼女に送った。彼女の返信はすぐに来た。きれいね。彼が返信する前に彼女がメッセージをさらに送ってきた。
〈真さんの写真は?〉
彼は困った顔をした。
思ったままに返す。
〈自分の写真とは〉
〈自撮りして〉
〈自撮りとは〉
〈誰もいないの?〉
誰もいなかった。
自撮りとは。
彼女は丁寧に解説した。端末のカメラで自分を写すの。こんな感じで。ほら。そう、部屋着の彼女の写真が送られてきた。彼は顔を赤くした。
〈わかった?〉
彼は写真の彼女を見ている。
可愛らしい。
きれいだ。
美しい。
どれも彼女を賛美するには、違う気がした。生き生きとした瞳が彼を見ている。
電話がかかってきた。
「あ、はい?!」
「どうしたの、真さん。操作が難しい?それとも写真を撮るのはイヤ?」
「あ、いえ、そうではなくて」
「電話しても大丈夫だった?」
「それはもちろん」
「よかった。写真送ったら返事がなかったから………………かわいくないわよねこの部屋着」
「ええと、違うんです、つい見てました。園子さんの写真を」
「え?」
「あの、……………大事にします、この写真」
「そ、そう?それなら、いいけど……でも、もっとちゃんとおしゃれして撮るから!そっち大事にして!」
「どれも大事にします」
「…………………うん。大事にして」
「はい」
「…………えっと!だから、それで真さんの写真は?」
「ええと、あまり分からなくて」
「やっぱり誰もいない?」
「宿に行ったらご主人がいるかと」
「それじゃ、お願いして撮ってもらってよ、私も欲しいし………真さんの写真」
耳元で優しく落ちる声に彼は再び顔を赤くした。
「はい」
「そ、それじゃ、またね!」
「はい。………………あの、その」
「なぁに?」
「─────────好きです」
ぎゃっ!と悲鳴が聞こえた。
「どうしました?!」
「あっ?!えっ?!なんでもない!!!!なんでもないわよ!!!!」
「な、なら、いいんですが…………」
「私も真さんのこと、大好き!」
じゃーね!と逃げるように電話は切れた。暫く彼はポンコツになって、宿をずいぶん通りすぎる羽目になり、辺りはすっかり夜に包まれ、写真を撮ってもらうのをついぞ忘れた。

彼は写真を眺める。自分のために撮られた彼女を。画面を指の腹でなぞった。星を見ていた、自分に届くないはずのない星は、太陽でもあった。結局のところ彼は自分に自信のないただの18歳で、強さを追い求めているものの、肉体ほど頑強でない心で、自分が好きな女の子のそばにいていいのかと悩んだままだ。地上のすべてに打ち勝って、強くなって、しかし、それでもまだ足りないのだろう、自分に勝つには。


繰り返し繰り返し波の音が聞こえる、声をかけてきた男は朝方沖に出るのだろう。その空に星はあり、やがて太陽は姿を見せる。海とどう戦うのか、彼は考える。真面目に、ふざけていると取られかれない真剣さで。海は彼女の姿をしていた。彼女の姿はどこにでもあった。彼は恋する男だった、果てのない深さで。だから、一層彼はいつも揺れていた、波の上の船のように。彼も海だったし、そうではなかった。全部そうだった。
彼はまだ修行の途中だ。なんにでもなれた。強さがあった、弱さがあった。時代が違えば英雄だった、すべてが許せば伝説になるはずだ、彼だけが、ただ彼女を見ていた。






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アナウンス
※現在プレイを休止しているものあります。
倉庫としておいています。

受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。