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キャベツ畑にコウノトリが来ることは知っているな!と野太い声で念押しされて、それは…

文章,短編

文章,短編

短文15

キャベツ畑にコウノトリが来ることは知っているな!と野太い声で念押しされて、それはそうですねと僕は頷く。先輩はキャベツ畑にコウノトリが赤ん坊を運んでくると言われているがそれは間違いだと言う。一瞬僕は身構えた。続いて先輩は、キャベツ畑にはタイムマシーンが埋まっているのだと真面目ったらしく告げた。

「はぁ」
「なんだその気の抜けた返答は」
「赤ん坊もタイムマシーンも間違いでは」
「赤ん坊は間違いだがタイムマシーンは事実だ」
「どうして」
「私の叔父が埋めたからだ」
「間違いですね」
「だから、事実だ」
「先輩また叔父さんに騙されているんですか?」
「またとは何だ!騙されたことなどない!」
「十円玉が繁殖するとかカブトムシは地球外生命体だとか、横断歩道の白い部分を踏んで渡らないと異世界に連れていかれているとか」
「異世界には連れていかれただろう!」
「いやあれはまあ、ノーカウントでしょう」
「何故だ」
「異世界っていうか異空間というか、まあ大体ニア現実だったでしょう」
「何故自分の過ちを認めないのだ」
「僕の?」
「貴君以外に誰がいる」
「先輩の叔父さんですよ」
「叔父は誰にも理解できない天才なのだ。身内の私が信じてやらねばどうする!」
そうやって単純な先輩を翻弄し続ける叔父は僕から見るとろくでなしにしか過ぎない。クズと天才が紙一重かと言われると判断に困る。判断しようにも天才にはお目にかかったことがないからだ。
「キャベツ畑を堀りにいくぞ!」
「農家さんに怒られますよ」
「許可をとったぞ!収穫を手伝えば考えてもいいと言われた」
それは許可でもないし体のいい手伝い要員だ。だがしかし、収穫したてのキャベツは美味いらしい、と先輩は言う。
「それが目的ですか」
「そんなわけなかろう!目的はタイムマシーンだ!」
「先輩はタイムマシーンで何するんですか?」
「そんな重要なものがあるのだから、どこかの研究所に提供して世界の技術の発展を望むべきだろう」
「じゃあ売るんですか?」
「何故?」
僕は先輩を見つめた。
先輩は不思議そうな顔で僕を見つめる。杞憂を抱く。クズの身内に騙されている現状、このままこの人を放り出してしまうと良いように利用されて終わるんじゃないか、先輩はそれにすら気づかずするべきことを果たしたと満足して終わるのではないか。
「分かりました、見つけたら僕がタイムマシーンを破壊します」
「何故?!」
「過ぎたる技術は人を滅ぼすからです」
「う、うむ……?」
「キャベツの収穫頑張りましょうね!」
「う、うむ………」
先輩は首を捻っていたが、やがてまあいいかと納得したものらしい。収穫したてのキャベツは美味しくて、先輩はバリバリ食べていた。当然と言えば当然の話だが、タイムマシーンの影はどこにもなく、その代わりに赤ん坊を見つけることになり、僕はこれで先輩が叔父さんの過ちに気づくかと期待したが、実際それどころではない問題が起きたため、キャベツ畑は今後封印される事態となった。

「誰しも間違いはある。仕方がないことだ」

締め括るように先輩は言う。徹底的に間違っているのはあんたの叔父さんだ。僕の杞憂はまだまだ続きそうだった。

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受け攻め性別不問/男女恋愛要素あり
R18と特殊設定のものはワンクッション置いています。
年齢制限は守ってください。よろしくお願いします。